第1章 群像のフーガ 2022/11
7話 露見する真意
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い、この世界では個人が明確なのだから尚更だろう。
「でも、そんな資金があるにも関わらず、キバオウは装備の一切を更新しなかった」
「本当か?」
「間違いない。第一回の攻略会議の時から、まったく変わっていないはずだ」
俺との取引は支払う意思が定かではないため判断材料から外すが、少なくともキリトとの取引では、キバオウは四万コルかそれ以上の資金を用意していたことが窺える。とても安い金額ではない。高収入なクエストや効率的な狩りを行っていなければ到底稼げない。新規プレイヤーがそれだけ用立てるならば、並々ならぬ苦節を耐え忍んだことだろう。ではなぜ、それだけの資金を用意しながら《アニールブレード+6》以外での装備調達を行わなかったのだろうか。
先程見たキバオウの装備は決して悪いものではなかった。だが、キリトに提示しただけの金額があれば装備をさらに強力なものに更新することもできたはずだ。このボス戦のために自身の強化を行うべく装備を購入しようとしながら、どうして他の手段で装備を更新しなかったのだろうか。
なぜ、《アニールブレード+6》でなければならないのか………?
「……………自分の金じゃないから遣えなかった、としたら辻褄が合わないか?」
「………なるほど、そういう事か」
キリトの言葉で、バラバラだった情報群が繋がってゆく。
キバオウが取引で提示した金はキバオウのものでなく、預けられたものだ。そんな事ができるのは、キバオウにベータ時代の情報を与えた人物であることが明白だ。つまり、キリトの持つ《アニールブレード+6》はキバオウ自身の強化の為ではなく、ハイエナとして認識していたキリトがLAを取れないように戦力を削ぐための工作に主眼が置かれていたということになる。俺との取引は自身がLAを取るためのステータス強化が目的だろう。
キバオウは進んで協力したはずだ。だからこそ、裏から指示を飛ばしていた人物も横領の危険性を恐れずキバオウを使えた。彼の目に映っていたのは《憎い悪と戦う正義の味方》だったのだから。その本性が、自分の憎む悪だとも知らずに。
だが、現状では妨害工作は失敗していながらもキリトはこうして前線から離れている。未だディアベルの組んだ戦術は破綻を見せず、ボスの攻撃に飛び込む余地もないように見える。このままこのPTが前線に出ることはないだろう。しかし、それさえも俺は違和感を覚えてしまう。どうにも、その謎の人物の思うように進行しているようで気味が悪い。
………だが、そのために思考に耽るには時間が足りなかった。
――――突如として、《イルファング・ザ・コボルドロード》が激しい咆哮を上げたのだ。
前線からは、それとは対照的な歓声が聞こえてくる。ボスの
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