魔石の時代
終章
ある家族の肖像
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言うところの地雷を踏んだというやつだ。
「何せアタシが作ったこれは光直伝の唐揚げだからね! あんまり肉を食べないフェイトがアタシにくれなかった――いやいや、残さず食べた逸品だよ!」
「くぅ……っ!」
意味もなく高笑いするアルフに、プレシアが呻く。大体予想通りだ。
「こ、この野菜炒めとかどうかしら?」
すみません、プレシア女史。正直、そっちをアルフが作ったと思っていました――フェイトに野菜炒めを進める彼女に、声にせず謝罪しておく。別に何故とは言わないが。
「もちろん美味しいよ!」
フェイトはそう答えたのだが――その横でアルフが邪悪な笑みを浮かべて言った。
「ちなみに、唐揚げはまだ余ってるよ?」
「ホント?!」
軽く背筋すら伸ばしながら、フェイトが言った。客観的に判定するなら――いや、皆まで言うまい。僕にも慈悲の心くらいはある。
「フッ! 光に教わること約二週間! アタシの料理の腕はかなり上がってるんだ。そりゃ、この唐揚げだって完全に再現できた訳じゃないけど……インスタント生活歴二〇年越えのアンタなんてハナっから敵じゃないね!」
「ううう……」
仲良き事は美しき事かな――とは先人の残した言葉だが。取りあえずそれで納得しておこう。下手につついてまた大蛇が飛び出してきても困る。
「ところで、アイツ――御神光は料理ができるのか?」
勝ち誇るアルフと打ちひしがれるプレシアはひとまず置いておくとして。その間で困惑しているフェイトに問いかける。正直に言えば、あの男が料理している姿というのは、なかなか思い浮かばないのだが。
「えっと、昔元宮廷料理人の人に教わった事があるとか何とか……」
にも関わらず、フェイトはそんな事を言い出した。色々と思う事はあるがひとまずは、
「……またアイツの経歴が混沌としてきたな」
「……ええ。本当に」
母さんと二人で頭を抱えていた。実際のところアイツの経歴については、今も頭痛の種だった。なのは達から聴取した情報を素直にまとめると、至るところで矛盾が生じる。このままでは報告書にならない。今のところ暫定版でのらりくらりと誤魔化しているが、いい加減正規の報告書を提出しないとマズいというのに。
(やはり次元漂流を疑った方がいいんだろうな)
とは思うが。その割には彼の過去――彼の戸籍が曖昧になった原因であると思われる『事故』は確かに起こっている。厄介な事にそんなところでは、整合性が取れてしまうのだ。もちろん、そこで入れ替わった可能性もある。ちょうどその時期に次元漂流を起こしかねない異常が確かに起こっているのだから。しかし、あの男がそれに巻き込まれたという確証はどこにもない。まったく、どうせ嘘をつくなら、もう少しまともな嘘をついて欲しかった。だが、それも今は置いておいて。
「でも、少し安心したわ」
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