魔石の時代
終章
ある家族の肖像
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イト・テスタロッサを受け入れてくれた。
アリシアの代わりではなく、妹として。
「妹がお姉ちゃんに似るのは別に変な話じゃないと思うんだ」
それ以上に私の中にある記憶はお姉ちゃんが生きていた証だった。たった五年間だけれど、それでも――確かにアリシア・テスタロッサという少女が生きた痕跡なのだ。
「誰かが生きた証、か……。だが、それはオマエにとって希望と呼べるものだったか? それがなければとっくに逃げ出せていたはずだ」
私が今まで縋っていたのはアリシアの記憶だったのかもしれない。いつか取り戻せると信じていた暖かな記憶は全てアリシアのものだったのかもしれない。けれど、それでも。
「そうかもしれない。でも、逃げ出していたら光やなのはとは会えなかった。母さんと分かり合える日だってきっと来なかった。だから、お姉ちゃんの記憶は……生きた証は私にとっても希望だったんだよ。今までも。きっと、これからも」
私にはこんなに素敵なお姉ちゃんがいたんです――今なら胸を張ってそう言えるから。そして、きっとお姉ちゃんに負けないくらいに笑って生きていける。笑って、アリシアの生きた証を未来へと繋いでいける。
「ありがとうございます」
「何がだ?」
「私のこと、ずっと心配してくれていたんですね」
私が壊れてしまわないように――私が笑うと、ニミュエはつまらなそうに……少なくとも、そう見せるように鼻を鳴らす。
「私はただあの女が気に入らなかっただけだ」
それだけ言い残すと、ニミュエは私に背中を向けた。夢が終わる。そう思った。
「オマエがそれでいいと言うなら、これ以上私が関わる事はない。……またオマエが壊れそうになるまではな」
言うと、背中を向けて迷いなくニミュエは歩き出した。きっともう、彼女とは会う事はできない。それも、何となく分かっていた。
「あの!」
私と同じ哀しみを抱いたままその生涯を閉じたであろう彼女に、救われた私が今さらどんな言葉をかけられるのか。
「そんな顔をするな」
振り返った彼女は、笑っていた。それはとても穏やかな笑みだった。
「多分、オマエが思っているよりも私は救われているよ。きっとな」
それだけ言い残すと、今度こそ彼女は遠いどこかへと歩き去っていった。
夢の世界が終わる。滲んで消えていくその世界の中で、誰かが私の頭に手を乗せた。
「光?」
何故そう思ったのか、自分でもよく分からなかった。はっきりと姿は見えないし、少なくとも背丈からして大人だろう。
「ま、ここから先は俺がどうにかするさ」
どうにかできるだけの時間があるか分からないがな――その誰かは言った。
「相棒もアイツをどうにか宥めたらしい。ま、それに『また』全部弟子任せってのは何とも締まらねえからな。せめて後始末くらいはしとかねえと」
つまり、こ
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