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その魂に祝福を
魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり5
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れに自分とて組織に救われた事がない訳ではないのだ。例えば、サンクチュアリやグリム、アヴァロンと言った組織に。彼らがいなければ、自分は今ここにはいない。自分ひとりで世界を守ってきたなどと自惚れられるほど、自分は傲慢でない。しかし、それなら一体何故?
(時空管理局……。記憶にはないはずだ。そんな組織とは接点がない)
 冷静になった今思い返してみても、やはり心当たりはない。それともまだ思い出していない記憶で、接点があったのか。……その可能性は決して否定はできない。あの時からこの『器』に収まるまでの記憶は今も酷く曖昧だ。そして、全てを鮮明に思い出す事は不可能である。その曖昧な記憶の中で、管理局と何かがあったと考えても別段不自然ではない。それに、
(あの時から考えて二〇〇年経ったかどうか、か……)
 組織が淘汰されるまでには充分な期間だが、淘汰が困難な規模になるためにも充分な期間だ。だとすれば――管理局が事実複数の『世界』を統治していると言うのであれば、連中とも接点がある可能性は考慮してしかるべきだ。
 だからこそ、管理局に対しても警戒を緩めないでいる。
(それならまぁ、矛盾はないか?)
 気が抜けない理由としては充分だ。だが、それだけでこれほどの敵意を覚えるかと言われると、やはり疑問が残る。ただ、それはひとまず置いておくとして――
「ハラオウン艦長。一つ訊きたい事がある」
 ふと気付いた事がある。文字通り『世界』を股に掛ける彼女なら、ひょっとして行方を知っているのではないか。それなら――
「何かしら?」
 リンディを見ながら、そんな欲望にかられる。
「や――」
 だが、それが言葉になる前に思いとどまる。訊いてどうなる?――彼女が本当に情報を持っているとも限らない。いや、持っていたとしても……突かなくていい藪を突けば何が飛び出してくるかわからない。
「いや、何でもない。忘れてくれ」
 それに、あの世界で自分が目覚めた以上、必ずあの世界のどこかにいるはずだ。下手な事を言って介入された方が厄介だった。それに、もう一つの可能性を思い到った。あれから何年経ったかはっきりしないが……あるいは――
「そう? ならいいけれど……。ところで、私にも一つ訊かせてくれる?」
 ともあれ。一瞬だけ怪訝そうな顔をしてから、リンディが言った。
「何だ?」
「リブロム君には何が書かれているの?」
 要するに見せろと言いたいのだろう。だが、それこそ論外だ。
「あれは日記だよ。いわば個人情報の塊だ。他人の日記を読むのはマナー違反だろう?」
 相棒が記憶しているのは、必ずしも魔法の叡智だけではない。青臭くて不器用な思い出や苦い過ち。……そんなものも記されているのだから。




 それから数日が過ぎた頃である。アースラで過ごした日々は――予想に反
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