第十四章 水都市の聖女
第四話 理想の王
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チラリとキュルケと互いの頬を引っ張り合っているルイズを見た後、アンリエッタに顔を向けた。
「戦争が起きたら、わたしたちはどうなるの?」
「可能性が一番高いのは、教皇の指揮の下につくのが一番高いかと思われます」
「そうですね」
セイバーが頷く。
「ええ、シロウさんが人質として捕らわれている今、わたくしたちはどんな要求にも抵抗出来ないでしょう。ですから、実際に戦争が起きれば、あなたたちは最前線に出される可能性がありますが……」
そこまで言って、アンリエッタはキュルケとのいささかいで体力を消耗したのか、膝に手を当て激しく肩を上下させながら息をするルイズに声を向けた。
「そこのところちゃんと分かっていますか?」
「分かってます―――勿論」
顔を上げたルイズは、汗で額に張り付いた髪の毛を掴みあげながらニコリとした笑みをアンリエッタに向けた。笑の形を描いてはいるが、決して笑ってはいない目を。
「幸いなことに―――弾の用意は十分よ」
「それは―――安心ですね」
一般人―――否、兵士であっても尻込みしそうな眼光を向けられたアンリエッタであったが、ふっと小さな笑みを返すだけで特別なリアクションを見せることはなかった。ただ、納得したかのような満足気な様子で頷くだけ。
「自分の使い魔を取り戻さなければいけませんから。ご主人さまであるわたしがちゃんとしないと」
「ふふ。そうですね」
「ええ。そうなんです」
『ふふふ……』と互いに笑いあう二人。その様子を隣で見ていたキュルケは、ルイズに引っ張られ痛む頬を撫でながら口を開いた。
「そう言えば、陛下はどうするおつもりなんですか?」
「―――え?」
問いに、アンリエッタはルイズからキュルケに顔を向けると疑問符を浮かべた。
「……陛下は地位も立場も何もかもあたしたちとは違います。これから起きるだろう戦争に陛下が関わるとするのなら、それはもはや一個人の問題ではありません。トリステインがこの戦争に関わるということです。あたしたちだけならば、言い訳は出来ますが、陛下の場合はそれも難しいかと……」
「……それ……は……」
「―――キュルケ」
「何よ」
アンリエッタが口を硬く結び身体を縮め、ルイズが厳しい口調でキュルケの名を呼ぶ。名を呼ばれたキュルケは、険しい目でルイズを睨みつけた。
「言葉が過ぎるわよ」
「……ええ。確かにそうね。陛下、失礼しました」
「―――いいえ、構いません……その通りですから」
アンリエッタの伏せた顔に前髪が掛かり、その奥がどうなっているのか伺い知る事は出来ない。が、遮られたその奥から聞こえれくる声は、僅かに震えていた。ルイズとキュルケは目を合わせ、僅かに逡巡を見せた後、結局口を
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