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剣の丘に花は咲く 
第十四章 水都市の聖女
第四話 理想の王
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ほんの少し緩めいた。

「な、なら、やぱりシロウさんは魔法で何処かに……」

 おずおずとティファニアが顔を上げると、キュルケが顔を顰めた。

「問題は本当に戻ってくるのかって点ね」
「……返さない可能性」
「確かに、ないとは言い切れないわね」

 タバサに頷いて見せたキュルケは、チラリとトリステインの女王を見る。

「なにせ返さなければ一国の王さえ動かせるわけだし」
「―――キュルケ」

 ルイズの批難めいた口調に、キュルケはそっと顔を逸らした。

「別に馬鹿にしているわけじゃないわよ……でも、誤解させたなら謝るわ」
「いえ、気になさらないでください。あなたの気持ちも分かりますし。ですが、その心配は少ないと思いますわ」

 軽く笑みを口に浮かばせ、片手を顔の前で左右に二、三度振ったアンリエッタは、その細い顎先に指を立てて小さく顔を上げた。

「シロウさんなら、一人でに帰ってこられる可能性もありますから。人質が勝手に戻られるよりも、ちゃんと自分たちで返したほうが何かとマシでしょうから」
「……帰って来られないかもしれない」
「ま、その可能性もあるにはあるでしょうけど、その時はその時よ」

 タバサに肩を竦めて返すと、キュルケはルイズに顔を向けた。

「で、肝心のご主人様はどうなのよ? シロウはあなたの使い魔なんでしょ。なら、視覚のリンクとか出来ないの?」
「……残念ながら視覚の共有は、一回しか経験がないのよ。それもわたしじゃなくてシロウの方」
「はぁ、役に立たないわね」
「五月蝿いわね」
「―――はぁっ?」
「―――あんっ?」

 ルイズがキュルケが互いに睨み合い、剣呑な気配が辺りに漂う。そんな中、何事もないかのように何時もと変わらない涼やかな声が上がる。

「ガリアはどう?」
「今のところ動きはないようですが……それも今後どうなるかは分かりません」

 タバサの省略し過ぎる問いに答えたのは、この場で最もそういった情報に詳しい人物であるアンリエッタだった。アンリエッタは目を伏せて何か考える様子を見せた後、チラリとキュルケと額をゴンゴンとぶつけ合い唸り声を上げるルイズを見た。

「ですが、彼らの狙いがルイズ―――いえ、虚無ならば……忌々しい事ですが、あの男の言った通りになる可能性が高いと思います」
「……本当にガリアは攻めてくると」

 不安気な声を上げるティファニアに、アンリエッタは頷いてみせる。

「教皇はガリアとの国境に兵を集めているそうです。本人は警戒のためだと言ってはいましたが、もしかすると……何か手を売っている可能性もあります」
「手、とは?」
「戦争を起こすためのです」
「……何故、そう思うのですか」

 鋭いセイバーからの視線を受けると、アン
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