第十四章 水都市の聖女
第四話 理想の王
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の心が望む願いを。
満開に咲く花のように笑って。
「それが、わたくしの願いです」
「そう、ですか」
「はい。こんな願いを抱くわたくしは、きっと王失格ですね。誰も認めてくれようはずがありませんから」
満足気に頷きながらも、口元に苦笑を浮かべ首を横に振ったアンリエッタに、セイバーも笑みを返す。
それは困ったような笑みではなく。
何処か、とても愛おしいものを見るような微笑みで。
「そう、思いますか?」
「っふふ。アルトリアさんはこんな事を望む王様を敬う人がいると思いますか?」
セイバーが浮かべる笑みを見て、何だか恥ずかしくなってきたアンリエッタが顔を背ける。
「さあ? それは私には分かりません。ですが―――」
「え?」
何時の間にか目の前に立っていたセイバーが手を伸ばし、アンリエッタの頬を撫でた。
冷たい、白く細い手のひらが、包み込むように頬に触れ、撫でるように滑る。
「今のあなたはとても魅力的です。そんなあなたに惹かれる人はきっと多い。だから、あなたは孤高とはならない―――いいえ、なれないでしょう。それに―――」
暖かな陽気に誘われ、花の蕾が綻ぶように。
「―――っ」
驚き固まるアンリエッタの目の前で―――花が、咲いた。
「何故なら、どんなに孤高であろうとしても、それを許してくれない人がいますから」
一輪の、黄金に輝く花が、芳しき香りと共に。
「あなたが笑顔を望む相手も、きっとあなたの笑顔を望むのですから」
恋する乙女のように、柔らかく暖かに―――満開に花開く。
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