第十四章 水都市の聖女
第四話 理想の王
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答えは既にある。
あの時、心に決めていた。
例え今、何かが分かったとしても。
自分は既に選んだのだ。
だから、答えは決まっている。
「……孤高であるしかない」
「それを決めるのはあなたです」
怒られるかと思いながら口にした言葉に、セイバーは悪いとも良いとも言わなかった。
ただ、アンリエッタの目を真っ直ぐに見つめるだけ。
その目には、悲しみも怒りも感じられず、ただ美しい。
一瞬状況も忘れ吸い込まれそうなほど美しい瞳に魅入られたアンリエッタの意識を戻したのも、またセイバーの声であった。
「トリステイン王国女王アンリエッタ・ド・トリステイン。最後に、一つだけ質問です」
「―――っ。はい、何でしょうか」
改めるようにしてアンリエッタに向き直ったセイバーが、厳かとも言える口調で質問をする。
何を聞かれるかと緊張するアンリエッタに、セイバーは短い問いを口にした。
「あなたの“望み”は何ですか」
「それは―――、それ、は……」
迷うように言いよどむアンリエッタ。
だがそれは、答えが分からず悩んでいるからではない。
答えはハッキリとしていた。
もう、大分前からアンリエッタの中では決まっていた。
そう、望んでいた。
一国の王としてあまりにも非常識に過ぎた望み。
だから、言い淀む。
「―――国を、民を……いいえ、違います、ね……」
自分の心を偽り間違った事を口にし―――直前に否定する。
何故?
当たり前だ。
失礼に過ぎる。
彼女を前にして、それは認められない。
だから、自嘲の笑いと共に顔を上げる。
前を見る。
「ふふ……本当に浅ましい……」
アルトリア・ペンドラゴンを見る。
「アルトリアさん」
「はい」
凛々しい顔で、彼女は頷く、
わたくしの答えを待つ。
だから、偽りなく自らの本心を伝える。
例えそれが、王として失格な答えであっても。
彼女には偽りたくないから。
「わたくしは―――わたくしの望みは、一つだけです」
「それは?」
「笑って欲しい」
「?」
「同じです」
戸惑い首を傾げるセイバーに、アンリエッタは笑って続ける。
「シロウさんと同じ……わたくしの望みはたった一つ―――笑って欲しい」
彼を思い、想い、願い―――アンリエッタは自らの胸から溢れ出しそうな心を包み込むように自分の身体を抱きしめた。
「一つ違うところは、ほかの誰でもなく。わたくしはシロウさんに笑って欲しい」
満面の笑みで。
童女の笑みで。
女の笑みで。
母の笑みで。
輝かんばかりに笑って、誇らしげに口にする。
自ら
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