第十四章 水都市の聖女
第四話 理想の王
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…」
「それは―――」
―――余りにも違いすぎる。
我の強い王様だと自分で口にしたが、それは全く間違っていなかったようだ。
騎士王とは真逆の王―――征服王。
一体どんな人物だったのだろうかとアンリエッタが考え込んでいると。
「アンリエッタ」
「は、はいっ!」
「“王の器”とあなたは言いますが、あなたは具体的にそれが何なのか分かっているのですか?」
「っ、わかり、ません……いえ、分からなくなりました」
自らの理想とする王。
民が、臣下が望む王。
それは、一体何なのか?
戦では必ず勝利し。
治世では公正公明。
非の打ち所のない―――誰もが望む王。
それの―――なんと冷たく悲しいことか……。
本当に、それは理想なのだろうか?
そうであることが、正しいことなのだろうか?
そんなものが、素晴らしいものなのだろうか?
何かが、欠けているのではないだろうか?
確かに人は、正しいものを求める。
素晴らしいもの、美しいもの、良きものを……。
世界を照らす太陽。
子を抱く親。
愛を囁く恋人。
……でも、それは正しいから、美しいから、良きものだから惹かれるのだろうか?
違う。
きっと、そうじゃない。
わたくしがウェールズさまに惹かれたのは、彼が美しかったからじゃない。
シロウさんに惹かれたのは、彼に救われたからじゃない。
そうだ。
違う。
あの人は―――暖かかった。
冷たく、凍えそうだったわたくしを、あの人は暖めてくれた。
言葉で、行動で、優しく、包み込むように。
だから、わたくしは惹かれたのだ。
どれだけ綺麗でも、どんなに正しくても駄目だった。
美しいものには感嘆の声を上げるだろう。
正しいものには従うだろう。
しかし、そこにぬくもりがなければ、人は受け入れることは出来ない。
そして、ぬくもりは、きっとヒトにしか抱くことは出来ない。
何故ならば、それはきっと、ヒトの心から生まれるものだから。
「―――王とは孤高なるや否や」
「え?」
何かが掴めそうになった時、セイバーの声がアンリエッタの意識を引き上げた。
思考に没頭し過ぎていたため周りの状況が掴めずぼうっとするアンリエッタに構わず、セイバーは問う。
「アンリエッタ。あなたは王とは孤高だと思いますか? 違うと思いますか?」
「王が、孤高か否か……それは―――」
アンリエッタのぼんやりとしていた視点が定まり。
セイバーの姿をハッキリと映した。
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