第十四章 水都市の聖女
第四話 理想の王
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、アンリエッタの答えに対し返ってきたのは正誤の判定ではなく、目を見開き驚きを露わにするセイバーの姿だった。
「あ、アルトリアさん?」
「す、すみません……その、少し想像の外の言葉でしたので……」
どうかしたのかとの声掛けに、セイバーは慌てながらも首を横に振りながら息を整えた。
セイバーが落ち着くのを確認すると、アンリエッタは自分の答えが何が変だったのか考え込みながら答えを尋ねる。
「そんなに変でしょうか? では、どうなったのですか?」
「否定、です」
「―――え?」
今度は自分の方が驚きを示した。
驚き固まっているアンリエッタに、セイバーは淡々と答えを教える。
「哂われ、憐れまれ……騎士王の願いは否定されました」
「ど、どういう事ですか? 何故、そんな……」
「より正確に言えば、願い―――国を救いたいという望みだけでなく。“王”としても、騎士王は否定されたのです」
「なっ―――どう、して」
アンリエッタには分からなかった。
何故?
どうして?
確かに心を殺して国の身命を捧げる行いはそら恐ろしささえ感じられる程であるが、その全ては国とそこに住まう者たちを思ってのこと。
常人では量りきれないほどの気高さ、優しさ。
なのに、何故?
どうして二人の王は望みを、それだけでなくその気高い魂すら否定したのか?
アンリエッタは疑問に満ちた眼差しを向け。視線の先にいるセイバーの目に、一瞬鋭い光が過ぎったのをアンリエッタは見た。
「先程、あなたは正しき王が“王の器”を持つ者だと言いましたが、今でも本当にそう思っていますか?」
「―――っ、ぁ」
セイバーは一歩も動いていない。
しかし、アンリエッタにはセイバーの姿が一瞬大きく見えたのか思わず背後に一歩逃げてしまう。
後ろに一歩、しかし直ぐに前に出たアンリエッタに、セイバーの責めるような問いが向けられる。
「臣下が、民が理想とする正しき王……確かに、それだけ聞けば、とても美しいものです。しかし、それはヒトの生き方ではありません。私心を殺し、ただ正しさだけに従い理想に殉ずる……そんなものはヒトではなく、国を動かす為の部品でしかない。正しさに従い理想に殉ずる―――それが、そんなモノが“王の器”だと、自らが目指すべき王だと……あなたは本当に思いますか?」
「わた、わたくしは―――っ」
反射的に言い返そうとするが、返せる言葉がない。
「『王とは、清濁含めヒトの臨界を極めたるもの』」
「え?」
「理想に殉じてこその王だと言う騎士王に対し、征服王が口にしたものです」
「清濁含め……ひとの臨界を極めたるもの……?」
「全て欲望のまま振舞えと言うことです。己が望むままに、笑い、怒り、哀しみ、楽しむ…
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