第十四章 水都市の聖女
第四話 理想の王
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「国を救った王が……結局は国を滅ぼす要因となったのです……」
「そんな」
なんて―――救いようのない。
「滅びた故国を前に、王は願った。故郷の救済を。そんな時、王は知ることになる」
それは、希望か絶望か。
「あらゆる望みが叶うという“万能の杯”の事を―――手にした者の望みが全て叶う“万能の願望機”の事を」
「万能の願望機?」
言葉の意味は何となく分かるが、それが一体どんなものなのか想像出来ず、問いかけるように口にしてしまう。
「“万能の杯”―――聖杯。それを手に入れ、滅びの運命から故郷を救うために、王は戦いに身を投じた。“聖杯”を巡った争い―――“聖杯戦争”と呼ばれる戦に」
「聖杯、戦争」
何処かで聞いた言葉を耳にし、何処で聞いたかを思い出そうと目を細め、
「聖杯を手にせんと揃った者たちは、何れも劣らぬ猛者たちであった。気を抜けば死は免れない。そんな争いの最中、とある者が酒宴を開いた」
「え? しゅ、酒宴?」
話の流れ的に有り得ない単語が聞こえ思わずハッキリと問いかけてしまうが、物語は途切れず続く。
「誰が聖杯を手にするに相応しいかを問うための酒宴です。その酒宴には、三人の王が参加しました。酒宴を開いた世界中を駆け巡り多くの国を征服した“征服王”。世界のあらゆる財宝を、欲望を己がうちに収めた“英雄王”。そして……滅んだ故国を救わんとする“騎士王”。三人の王は各々が聖杯に掛ける望みと正当性を説いた。“英雄王”は、望みはないが、聖杯は自分の宝物庫から盗まれたものであるが故に取り戻すと。“征服王”は世界を駆け、全てを征服するために身体を蝕む病の快癒を望んだ。例え聖杯が他に正当な所有権を持つ者がいたとしても、奪い、侵すのが己の王道である『征服』だと宣言して」
「それは、また随分と我の強い人たちですね」
まるで子供のような二人の王さまの話に、アンリエッタは羨ましげに目を細め笑みを浮かべた。
「我が強いで済ませられるような奴らではなかったですが」
「ぇ?」
「いえ。何でもありません」
ハッキリと返事が返って来て漏れ出た声に対しセイバーが首を振り応える。
「そして、最後に騎士王が己の望みを口にした。滅んだ故郷の救済を、万能の願望機を持って故国を滅びの運命から救い出したいと」
口を閉じたセイバーは体ごとアンリエッタに向ける。
「―――アンリエッタ」
「え?」
「その望みを聞いて、二人の王はどうしたと思いますか?」
「それは……感動した、とかでしょうか?」
「………………」
セイバーからの唐突な問いかけに対し、疑問の声を上げることなくアンリエッタは素直に顎に指を添えて考え込むと首を傾げながら自分なりの答えを口にする。
しかし
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