第十四章 水都市の聖女
第四話 理想の王
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きなんだけど。あれは確か……ああ、そうそう、少し前に訓練の中休みに、うちの隊長がお菓子を持ってきたんだけど―――いやいや、うちの隊長の手作り。は? 女の隊長かだって? そりゃそうなら嬉しいんだけど。残念ながら男でね。で、丁度訓練が一段落してお腹が空いていた時間帯だったせいか、もう一瞬で全部食べてしまって。だけど隊長が持ってきたお菓子は五つあったんだよ。で、ほら、周り見て分かる通り自分も含めて四人しかいないだろ。ここには今いないんだけど、もう一人副隊長がいるんだよ。で、まあその場の勢いというか何と言うか飢餓状態だったからと言うか……つまり五つ目、副隊長の分のお菓子まで食べてしまったんだよ。その後、隊長からお菓子があると聞いてやって来た副隊長が、自分の分のお菓子を食べられたと知って―――……あわ、あわ、あわわわわわわわわ」
突然震えだした警備の少年に、話を聞いていた周囲の者が心配気に声を掛ける。少年は周りから掛けられる安否の声に、粘ついた汗が流れる頬を引きつらせながらも笑みを返す。
「あ、ああ。大丈夫大丈夫。いや、あの時受けたお仕置きは何故か余り記憶になくてね。無理矢理思い出そうとするとさっきみたいになってしまうんだよ。微かに残る記憶には……剣と風と、後……竜」
またもガクガクと震えだす少年の姿に、怯えが伝播したかのように周囲の平民たちが僅かに後ろに下がった。
そんな奇妙な光景がチラホラと広がる中、数少ない人数で何とか警備を遂行している水精霊騎士隊が守る聖堂の中では、話の中で姿を見せていた件の副隊長を含む数人の女性たちが、聖堂内にある小さな部屋に集まって何やら話をしていた。
数は六人。
士郎と共にロマリアへとやって来た者の女性である。
ロマリアに残っていたキュルケたちが、つい先程アクイレイアへと着いたのだ。コルベールは、ここアクイレイアへと来るために使ったオストラント号の点検を行っているため、現在は不在であった。
狭い一室で円を描くような形で向かい合っている六人は、全員揃って押し黙っている。顔を伏せ、目も合わせていない。空気が鈍感な者でも分かる程ピリピリと張り詰めていた。
何故?
理由は簡単だ。
それは―――
「つまり―――結局手がかりはなしと言うことね」
「……ええ、残念ながら。ロマリアにはシロウはいないし、ロマリアからも出ていないみたいよ。とは言え、流石に絶対とは言えないけど……ほら、あの馬鹿でかい聖堂ならどこへでも隠す事は可能でしょう」
「いえ、あなたがシロウがロマリアにいないと判断したならば、本当にいないのでしょう」
「あらアルト? そんなに簡単に信用してくれるの?」
「ええ。あなたは信用に値する人物ですので」
「ありがと」
互いに笑みを交わし合うと、部屋を漂っていた緊張感が
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