第十四章 水都市の聖女
第四話 理想の王
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人、人、人人人人人人人人人人人人……人の群れ―――の中に時折牛やら羊やら家畜の姿。
血管のように水路が巡るアクイレイアは、移動手段として船が使えるため交通には便利であるが、その代わり都市としては土地が水路に削られ窮屈になっていまっている。そんな場所に、ハルケギニア中から人が集まって来ていた。
即位三周年記念式典が始まったのだ。老若男女なくハルケギニア中からブリミル教の信者たちが一斉に押し寄せていた。その中には運良く祝福を受けられるのではと、付加価値を付けるためか家から家畜を持ってくる豪の者が幾人か見かけられた。
既にアクイレイアの許容量を軽く超え、二、三人並んで歩くのが限界な細い道に信者たちがぎっしりと詰まっている様子が、街中で頻繁に見かけられた。そんな中、特に人口密度が酷かったのが、教皇が巫女を従え祈りを捧げている聖ルティア聖堂の周囲であった。一般の者は聖堂の中へと入る事は許可されていない。そのため、聖堂の周囲の人口密度は現在のアクイレイアの中で最高であった。
聖堂周辺は、さながらすし詰めならぬ押し詰め状態。
身体の弱い者や小さな子供ならば、押しつぶされる危険を感じられる程であった。
ブリミル教徒の目的は、教皇の姿を一目見ることだ。しかし、聖堂の一番前にいる者はともかく、後ろにいる者たちの中には、聖堂の屋根すら見えていない者たちが大勢いるのだ。少しでも前へ行こうとし、結果として群衆は前へと出る。そんな前へと出る群衆が聖堂の中へ入らないように守る者たちがいた。
青地に白百合と聖具の紋が刻まれたサーコートを身に着けるギーシュたち水精霊騎士隊である。
彼らは奮闘していた。
現在は午前十一時過ぎ。
彼らが警備を始めてから約六時間。
限界が近づいていた。
早朝の午前五時から祈りを捧げる教皇と共に警備を開始し、今まで唯の一人も聖堂への侵入を許していなかった。一目教皇を見ようと少しでも前へと出ようとする民衆を、時に口で諌め、時に実力で鎮圧し、時に泣き落とし……。上手く捌いていた彼らであったが、しかし、毎日士郎にシゴかれ驚異的な体力を持つ彼らであっても、やはり、人数の差を埋めることは難しかった。
なにせ水精霊騎士隊が四人に対し、相手は数千人以上だ。
どうにかこうにか出来るわけがない。
それどころか、たった四人で五時間も持たせていたこと自体が異常である。
伊達に毎日士郎との訓練で死にかけているわけではないようだ。
「はいはいはいはいお爺さん。はいそこで止まって。これ以上は通行止めでね。それ以上前へ出られたらちょっと困った事になってしまうんだよ。え? どんな困った事になるのかだって? そりゃあれだ。うちの副隊長殿から後でお仕置きされてしまうのさ。ん? どんなお仕置きかだって? そうだね。この間のお仕置
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