第四章
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第四章
これでまずは怯ませてだった。そのうえで木刀で成敗するつもりだった。
右手で自転車のハンドルを操り左手に木刀を握る。今まさに倒そうとした時だった。
「えっ!?」
「痴漢!?それとも強盗?」
その三人組の方から声がしたのだった。
「まさか。夜に」
「やっつける?」
「やっつける?」
悟志はその三人の声にいぶかしむものを感じた。そしてそれと共にその中に普段から聞いている声を確かに聞いたのであった。
その声が何かというとだった。
「まさか」
「それなら容赦はしないわよ」
「覚悟しなさい」
「間違いない」
ここで彼はわかったのだった。急いで自転車を止めた。丁度その三人組の前に止まることができた。
そうしてだった。暗闇の中で三人を見るとだった。実に奇麗な顔立ちばかり並んでいる。そしてその中の一人は紛れもなく。
「あっ、先生」
「九条さん」
美奈子だった。それは紛れもなく彼女だった。
見れば白衣である。その上にカーディガンを羽織っている。その姿で夜の街にいるのだった。
何故そこにいるのかはすぐにわかった。もう彼女自身から聞いていることだった。
「見回りですか」
「はい、そうです」
美奈子もまた彼に答えてきた。
「それでなんですよ」
「その口裂け女がいるかどうかですね」
「ええ。けれどいませんね」
「そうですね」
悟志も彼女の今の言葉に頷いた。見れば彼女もそうだし他の二人もだった。怪訝な顔になって彼の顔を見ているのだった。
「どうやら」
「それで先生もですか?」
今度は美奈子の方から彼に問うてきた。その大きな口から。
「口裂け女を退治する為に」
「はい、そうなんです」
その美奈子を見ながらの言葉である。
「けれど全然いませんね」
「そうですね。やっぱり」
「いや」
しかしだった。悟志は美奈子のその整った顔の口のところを見て。ふと思ったのだった。
「あのですね」
「はい?」
「いえ、院長先生にお話して下さい」
まずはこう美奈子に話すのだった。
「宜しいでしょうか」
「何をですか?」
「今こうして看護士さんが何人かで夜見回っていますよね」
「ええ、そうですけれど」
「それは俺に任せて下さい」
こう申し出るのだった。
「皆さんはもう病院でのお仕事に専念されて」
「その様にですか」
「はい、それで御願いします」
「わかりました。それでは」
彼の言葉にこくりと頷く美奈子だった。
「それで」
「ええ、そういうことで」
話をまとめてみた。それから暫く彼が夜の街を見回った。するとここで面白いことが起こったのである。
口裂け女を見たという話が完全に消えた。子供達もそんな噂を口にすることはなくなっていた。そうした話は見事なまで
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