「新聞記者なのに」
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借金の手続きをすませたルドガーは、エルたちを連れてバーを出た。
暗いストリートを駅に向かっていると、ふいにレイアが言った。
「……ごめん。何もできなくて」
元気印のレイアに落ち込まれると、太陽を隠された心地になる。
「あんまり自分を責めるなよ。何もできなくたって、それで俺がレイアを恨んだりするわけないんだから」
細い手が握りしめた黄のジャケットにシワが寄った。
「……悔しいよ。真実を世の中に伝えるのが新聞記者なのに。わたし、ちっとも役に立てなかった」
ルドガーは見かねて、レイアの両手を掴んで解かせた。
「ルドガー……?」
「正直さ、知らない間に借金させられて、俺もう人生観ぐらぐらだったんだ。俺が何かした? って。でもレイアはさ、最後まで俺は悪くなくて、悪いのはあっちだって主張して俺たちを庇ってくれた。それにすごく――救われた。ああ俺、何かとんでもないことしでかしたわけじゃないんだ、俺は俺のままなんだって」
「そんな。大袈裟だよ。わたしは中途半端に知識ひけらかしただけだよ」
「でも最後まで俺の――俺とエルの味方だった。ありがとな、レイア」
「ありがとっ」
エルも礼を言った。ルドガーの真似をしてか、本人の意思かは分からないが。
「……はぁー。もう。ルドガーってば相変らずなんだから」
レイアはキャスケットの鍔を少し下ろした。
ルドガーはエルと顔を見合わせ、首を傾げ合った。
「Dr.マティスって知ってる? ヘリオボーグで源霊匣の研究開発してる人」
「名前だけ、なら」
「おりじんって?」
「確か俺たちにも使える算譜術の装置だったと思うけど」
「精霊を殺さず、霊力野のない人にも使える、黒匣に代わる装置だよ。もっとも失敗続きで開発は足踏みしてるけど」
レイアは苦笑気味に解説した。
「実はわたしの知り合いなの。さっきの電話、その彼からでね。ニュース観てわたしが無事か気になったみたいで。Dr.マティスって精霊研究もしてるから、ひょっとしたらルドガーの力とかあの変な世界……それに、イリスのこと、ちょっとでも分かるかもしれないよ」
イリスの名を出されては心の天秤も傾く。
「――うん。じゃあ行ってみよう。ヘリオボーグ」
「エルも行く!」
下からエルの目一杯の声。
「時計、返してもらってない。あの時計がなきゃ、エル、カナンの地に行けないもん」
ルドガーはエルの前で片膝を突いて目線を合わせる。
「どうしてそんなに、その、カナンの地に行きたいんだ?」
「約束したから。約束は、守らなきゃダメでしょ? イリス、カナンの地、知ってるっぽかったから。ルドガーたちも、イリス
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