「新聞記者なのに」
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に会いに行くんでしょ。だからエルも付いてく」
「家に帰らなくていいのか?」
エルは無言で、硬く肯いた。そもそもエルがどこからどう来たかはエル自身も分かっていないようだし、これは保護者が名乗り出るまでルドガーが引き受けるしかない。ルドガーも腹を据えた。
「じゃあみんなで行くか」
「うん!」
「列車? 徒歩?」
「列車。この子と二人分くらいならまだ持ち合わせはある」
レイアにも切符代くらいはあるはずだ。彼女はエレンピオスで置き引きに遭って以来、金銭は分割して持ち歩いていると聞いた覚えがある。
ルドガーたちは一路、ドヴォール駅へ向かった。
ドヴォール駅はテロの影響で込み合っていた。小さなエルが人混みにはぐれてしまわないように、ルドガーとレイアで両側からエルの手を繋いで歩いた。
券売機前の列に並んで順番を待つ。そしていざ、ルドガーの番が回ってきて、ルドガーはGHSを券売機のリーダーに当てた。
すると、リーダーが赤く灯り、明らかに警告らしき音が上がった。
音を聞いた近くの駅員がやってきて、券売機の表示を見た。
「発券はできないよ」
「なんでー!?」
「なんでって、この男の移動には制限がかかってる。見逃したらこっちが処罰されるんだ」
その時、タイミングよくGHSに着信があった。ノヴァからだ。
ルドガーは急いで電話に出た。
『ごめーん。移動制限について説明してなかったね。エレンピオスはGHSで個人情報を管理してるでしょ? 背負った債務に応じて、移動を制限するコードが発動するの』
その後もつらつらとノヴァは説明するが、ルドガーにはほとんど聞こえなかった。聞きたくないのだと脳が聴覚をシャットアウトしたようだった。
――まったく、何をやらかしたんだか――
――まだ若いのに、人生詰んでるな――
遠慮なく言い捨てて行った駅員たちに触発されてか、駅構内の人々がルドガーをちらちら見ながらひそひそ話し始める。
大声で「チガウ」と叫びたい気持ちと、ここから一刻も早く消えたい気持ちがぶつかり合う。
知らない所で、ルドガー・ウィル・クルスニクの社会的地位が崩れ落ちていた。
その時、エルが駅員の去ったほうへ走り出て仁王立ちしたかと思うと。
「ばーか! なんにも知らないくせに!」
まさにルドガーが主張したかったことを叫んでくれた。
ルドガーが呆気にとられていると、エルはルドガーの片手をふんずと掴んで歩き出した。当然ルドガーも引っ張られる形で付いて行く。
「何か日雇いの仕事ないか斡旋所で探してみよ」
気づけばレイアも付いて来ていた。
「大丈夫。どんな時だって付いてる。友達だもん」
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