Interview3 鍵の少女、殻の悪女
「イケナイお兄ちゃんね」
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と一線を画する力、そして貴女だけが知る2000年前の真実を、我らが切り札とさせてもらう」
「――生憎とイリスはそこまで縛られてあげることはできないのよ」
イリスを中心に紫の歯車が現れ、イリスは姿を変えた。ルドガーが初めて会った日にまとっていた紫暗のアーマードスーツだ。
イリスはスーツの装甲を盾にし、ユリウスの剣戟を受けた。イリスが初めて素手で攻撃を捌いた。
「いい太刀筋。研鑽と意志が滲み出ている」
「ぐぅ…っ!」
鍔迫り合いが解かれる。
離れたイリスの手に顕れる、水晶のロングブレード。イリスはブレードをユリウスの双刀に大上段から振り下ろした。
ユリウスは刀身にブレードを掠らせるに留め、バックステップでイリスから距離を取る。
(信じられない。あのユリウスが防戦一方だなんて)
「『ヴィクトル』を除けば貴方は間違いなく当代最強の戦士よ。この域に至るまで挫けずに前進してきて――本当にえらかったわね」
イリスが不意に口にした労いは、数秒、わずか数秒だけユリウスの戦意を削いだ。
数秒がイリスにとって絶好の隙だった。
イリスはユリウスの両手を、腰のパーツから射出した触手でがんじがらめに捕えた。そして、ふわりと懐に入った。
「でもね。『それ』だけは感心できないわ。弟のモノを奪うなんてイケナイお兄ちゃんね」
「がっ!? あああああっっ…!」
鋭い刃物が肉を裂く音がした。音だけだ。それがよけいに生々しかった。
触手の拘束が解ける。ユリウスは胸を押さえて苦しげに膝を突いた。とたんにユリウスを覆っていた蒼黒の殻が消えた。
「許してね。コレを返してもらうには、貴方に一度殻を解いてもらわないといけなかったから。痛い思いをさせて、ごめんなさい」
イリスのかんばせには紛れもない申し訳なさと憐憫。さすがのユリウスも、自分をこてんぱんにした相手の心からの謝罪に泡を食っている。
銀髪を翻して立ち上がり、イリスはルドガーを顧みた。触手の尖端には、真鍮の懐中時計が吊られている。
イリスは時計を取ると、何とルドガーに向かって晴れやかにそれを投げた。
「受け取りなさい。それは貴方の資格よっ」
「やめろッッ! 取るな、ルドガー!!」
兄の制止は遅すぎた。ルドガーは腕を宙に伸ばしていた。意図したわけではない、完全な反射。
真鍮の時計を手にした瞬間、ルドガーの全身の血が沸騰した。
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