Interview2 1000年待った語り部 T
「向いてないと思ったことはないですか?」
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
その「取材」の日からルドガーとレイアの付き合いは始まった。
レイアは「とにかくがんばる」がモットーの子で、取材のネタがあると聞けば東西南北、国の隔てなどぽーんと飛び越えて現場に向かうような元気印の女の子だった。
だがその熱意は大体が空振りに終わり、ネタを集めて書いた記事は編集長に酷評されて終わるとか。
「『あんな感想文もどき新聞に載せられるか、バカ。焦点もぼやけてる。何を記事にしたかったんだ? 雇用問題か、環境問題か、事件速報か、それとも文化か? 思ったこと書きゃいいわけじゃない』だってさー」
「一言一句違わず言えるってことは、それ何回も言われてるんだな」
「呑まなきゃやってられっかーっ」
「ノンアルコールだけどな」
口ではそう言うものの、あまりに心配になったルドガーは、付き合い1ヶ月半ほどで、自分にもレイアの取材の手伝いをさせてくれ、と頼み込んだ。
「就職活動はいいの?」
「やりながら手伝う。少しでもレイアの力になりたいんだ。頼む!」
「わたしなら心配ないって。これでもそんじょそこらの魔物より頑丈なんだから」
「ダメだ! ……あ、いや、ごめん。とにかく。レイアが心配なんだ。俺も一緒にやらせてくれ」
「あ……うん。ルドガーがそうしたいなら、わたしは、いいけど」
彼自身、どうしてこうもレイアを放っておけないのか、レイアが気になってしようがないのか分からなかった。
分からないのに、目はレイアの動きを追い、レイアの笑顔を見るとふわふわした気分になって、取材に臨む真剣なまなざしと芯のある声に鼓動が跳ねた。
だが、そんなルドガーの機微を無視して、現実とはどこでも付いて回るもので。
載らない没原稿が増えるたび、さすがのレイアも消沈した。
反省会を二人でやる日もあったが、今度こそレイアもルドガーも持てる全てを注ぎ込んだという出来栄えだっただけに、没を食らったのはルドガーでさえ辛かった。
(あの編集長、一度闇討ちしたろか)
ジンジャーティーを淹れながら剣呑な企みを巡らすルドガー・ウィル・クルスニク(20)。
二人分のジンジャーティーを持ってリビングに戻ると、レイアはテーブルに突っ伏したままだった。
ルドガーはそろ〜っとカップをレイアの横に置いた。
「るどがぁ〜…わたし、この仕事向いてないのかなあ〜…」
出た。社会人1年生が100%口にするという「私、この仕事向いてないんじゃないかしら」発言。
ルドガーが否定してやるのは簡単だが、果たして社会人未満のルドガーの言葉にレイアを元気づけるだけの重みがあるのか。声をかけあぐねる。
その時、タイミングを計ったように玄関のドアがスライドした。
「ユリウス。おかえり」
「ただいま。――レイ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ