Interview2 1000年待った語り部 T
「向いてないと思ったことはないですか?」
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ア君、来てたのか」
「おかえりなさぁい、ユリウスさん。おじゃましてま〜す」
レイアは頻繁にこの部屋を訪れるので、ユリウスもすっかりレイアと顔なじみだ。加えて、ルドガーと違いユリウスは歴とした社会人。その点でレイアとユリウスの間で話が通じることも珍しくなく、たまに、ごくたまに、面白くない目を見たこともあった。
だが、今回はそれこそが必要だった。
ルドガーはユリウスの腕を掴むと、有無を言わせずキッチンに引きずり込んだ。
「何だいきなり」
「レイアがまた記事ボツ食らって凹んでんだ。慰めてやってくれよ。ユリウス、得意だろ、そういうの」
自分で自分の友人も慰められないのは情けないが、失敗してレイアがよけいに沈むよりはいい。
「頼むよ兄さん。な?」
「こんな時だけ兄貴扱いか……はあ。分かった。ちょっと待ってろ」
ユリウスがリビングに向かうのを見届け、ルドガーはキッチンに向き直った。自分にできるのは、せめてレイアにおいしい手料理を食わせてやることだけだ。
気合を入れて冷蔵庫を開けた。今日は得意のトマトソースパスタで勝負だ。
トマトはじめとする食材と乾麺を出して調理を始めてしばらく、リビングからバタバタと物音がした。
次いで、レイアがキッチンを覗き込んできた。
「ごめん! 今日はもう帰るね! やりくさしの原稿あるから!」
「え!? ちょ、おい、レイアっ」
「ほんっとごめん! またご飯食べさせて」
言うだけ言って、レイアは部屋を出て行ってしまった。ルドガーはエプロン姿のままぽけっと突っ立っていた。鍋でパスタが噴き零れなければ、ずっとそうしていただろう。
鍋の火を止め、リビングに行った。ユリウスに、レイアに何を吹き込んだか聞くために。
「俺はそう思ったことはないか、と聞かれたよ。『ユリウスさんは今の仕事が自分に向いてないと思ったことはないですか?』ってな」
「何て答えたんだ?」
「もちろん何度もあると答えたさ。それから『そういう時はレイア君も頑張ってるんだろうなと思って気合を入れる』って付け加えた」
「だからあの勢い」
「だな。というわけで、今日の夕飯は」
「分かってる。追加分、トマトのブルスケッタでいいか?」
「よろしく頼むよ、シェフ」
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