Interview2 1000年待った語り部 T
「こういうのは気分なんだから」
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取られたの初めてだよ〜」
「そう、なのか?」
「リーゼ・マクシア人っていうとさ、未開の土地の原住民ってイメージ持ってるエレンピオス人のほうが多くてねー。服替えても分かる人は分かるみたいだし。わたしも来たばっかの頃は路上で精霊じゅ――算譜法使って変な目で見られてね」
「黒匣なしで?」
「そりゃもちろん。気味悪い?」
「……そんなことない」
レイアは遠慮なく噴き出し、快活な笑い声を上げた。周りの席の客が不躾にこちらを窺ってくる。居心地が悪かった。
「ルドガーさんってさ、嘘下手って言われない?」
「あー…」
「あははー。顔と台詞が一致してなかったって! これでも記者になろうって身だからね、人間観察はちょいと勉強中なのだよ」
「ごめん」
「気にしないで。ルドガーさんは本心からわたしを気遣って答えてくれた。試すような質問したわたしも悪かったし。ごめんなさい」
レイアはペコッと頭を下げた。
ルドガーは苦笑した。本当にどこまでも気風のいい少女だ。黒匣に毒されず、風と土に恵みを受けて育ったリーゼ・マクシア人は、レイアみたいないい娘ばかりなのだろうか。
「ええっと、さっきの話ね。わたしなりの仮説だから。ただの地震って線も否めない。それでも聞き捨てなんない情報ゲットしちゃったからには、徹底的に調べてみるね。ありがと、ルドガーさん。おかげで取材の方針が決まったよ」
レイアの笑みが、あんまり――綺麗、だったから。
「あのさ」
出した声は思いの外乾いていた。ルドガーは手元の水を飲んで仕切り直した。
「また何かあったら情報持って行きたいから、連絡先、教えてくれないか」
「ほんと!? 助かるぅー。あ、待って。今書くからっ」
「あ…じゃあ、俺も」
レイアに倣い、テーブルのナプキンを取り出して、GHSの番号、アドレス、名前を書き込む。
「はい、どーぞ」
「ありがとう。こっちが俺の」
「ありがと。――ついにわたしもネタ元ゲット! 見たか編集長〜!」
「ネタ元になれるほど重要機密は知らないけど……」
「いいの。こういうのは気分なんだから」
レイアはひまわりのような笑顔を浮かべた。その笑顔だけで、いいか、とルドガーは思えた。
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