Interview2 1000年待った語り部 T
「夢なんかじゃなかった」
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少女は記者というよりは読者モデルを思わせた。
まんまるな目はパロットグリーンの宝石をそのまま嵌めたようにキラキラしている。ルドガーの視線は自然と彼女の目の輝きに吸い込まれた。
「2ヶ月前にトリグラフで起きた大地震について、ルドガーさんが知ってることをお伺いしたいんです。今、お時間空いてますか?」
大地震。多くの出来事が脳裏を奔る。――エージェント採用試験。地下訓練場。何百本という触手に拘束されていたイリス。人間がマナを吐くだけの物体に成り果てた世界。数多の精霊が「人間」に向けていた侮蔑――
「どうして俺に? 俺はクラン社の採用試験に落ちた部外者だし、地震がクラン社と関係あるとは限らないだろう?」
「ところがそうとも限らないんですよね」
少女はメモ帳を繰る。
「まず震央はクランスピア社。震源はピンポイントに本社ビルの真下です。本社ビルより下には戦闘・特務エージェントのための訓練場がありますよね。地震発生の日、訓練場はエージェント枠の入社希望者のための実技試験会場に使われてたって裏が取れてます。ルドガーさんもこの日の受験生のお一人でしたよね?」
淀みなく述べる少女に内心驚嘆した。ここまで調べているなら、自分などがいくら理屈をこね回そうがすっぱり説破されるに違いない。
「まあ、そうだけど。本当に俺があの地震と関係あるかなんて分からないよ? それでもいいなら取材ってやつ、受けるよ」
「もちろんですっ。ありがとうございます!」
本心の底から、裏もなく、とても嬉しい――そんな清々しく爽やかな感情が伝わる、笑顔、だった。
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