Interview1 End meets Start T
「世界に散らばる私の子どもたちよ」
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地揺れの影響が最も深刻だったのは、入社試験会場で試験官をしていたユリウスかもしれない。
「CS黒匣ガード緊急停止! 待機中の受験生を1階へ誘導しろ!」
試験官として迅速に指示を出すユリウス。指示を受けて動く部下たちは心中で「さすが室長」と感嘆していたりするのだが、ユリウス自身はそれどころではない。
(この非常事態なら試験が中止になることくらい、ルドガーなら分かるはずだ。それが戻らない……となると、多分道が塞がれたかで戻れなくなったんだ。早く行ってやらないといけないのに!)
弟を思う余り焦りが募る。
その焦りを鎮めるように、その「声」はユリウスの頭に直接響いた。
世界中の息子たちよ……
最初は空耳かと思った。だが、周囲にいたエージェントが数名、ユリウスと同じように訝しんで周りを見回していることから、幻聴ではないようだ。
――後に知ることになるが、ユリウスと、そしてエージェント数名は、全員が骸殻能力者――クルスニク一族の者たちだった。
地域新聞社「デイリートリグラフ」が構えるテナントビル。
その大動脈、編集部のオフィスは忙しなかった。
9割の社員が先の地揺れで散らばった原稿を拾い、または原稿が入ったデータ媒体に異常がないかチェックするのに必死だった。彼らにとってはすぐ来る明日に遺漏なく出さねばならない情報、大事な飯のタネなのだ。
その中で一人だけ、開いた窓から身を乗り出して、灰色立ち込める天を仰ぐ少女がいた。
吸い込まれるように、ひたむきに、少女は曇り空を仰ぎ見ていた。
――否。少女は、耳を傾けていたのだ。
天を伝わり、血の同胞のみが聴くはずの、その声に。
世界中の息子たちよ
私はあなたが殺されるのを見たくありません
私はあなたが殺すのを見たくありません
世界中の娘たちよ
私はあなたを守るために目覚めました
私はあなたの魂を奪われぬために目覚めました
世界に散らばる私の子どもたちよ
私はあなたたちを愛しています
私があなたたちを守ります
私があなたたちを幸福な未来へ導きます
ルドガーの目の前で土埃が晴れて、現れたモノは――人間でも精霊でもなかった。
顔が、なかった。そこにいたモノには、顔がなかったのだ。
つるりとした石膏のペルソナ。血の涙
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