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バレンタインは一色じゃない
4部分:第四章
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むしろ羨ましいっていうのか」
「そうさ。わかったらさあ」
「観念するんだな」
「だからそれはわかってるさ」
 彰浩はその顔に憔悴だけでなく憮然としたものまで入れてきた。
「それじゃあ。いざ」
 何だかんだで腹を括った。その前に麻紀子がやって来ていた。満面に笑顔を浮かべてその両手に何かを持って彼の前に来るのであった。
「お早う」
「うん」
 彰浩はまずは麻紀子のいつもの挨拶に応えた。
「今日は何の日か知ってるわよね」
「勿論だよ」
 ここまでのやり取りはまずは予定調和であった。もう言うまでもないやり取りであった。
「バレンタインだよね」
「ええ。だから」
 そうしたここまで話したうえで彼女はまた言うのであった。
「チョコレート。作ってきたわ」
「作ってきてくれたんだ」
「そうよ」
 その満面ににこりとした笑顔を浮かべるのも予定調和である。バレンタインだけではないが誰にとっても非常に喜ばしい予定調和である。
「それがこれなのよ。はいっ」
 いきなり切り札を出してきた。その切り札を。
「これ。よかったら食べて」
「さて、逃げないとはいっても」
「勝負には勝てるかな」
 さっきまで彰浩と話していたクラスメイト達は彰浩を見ながら呟くのであった。確かに彼も憔悴しきっているがそれが彼だけではなかった。見れば麻紀子にもまた憔悴が見られる。それがチョコレートを作ったせいであることは一目瞭然であった。何しろバレンタインだからだ。

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