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バレンタインは一色じゃない
3部分:第三章
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作るから」
「普通じゃないのをね」
「当然よ」
 どうも麻紀子は外見だけでなくその考えもお母さんにそっくりであるらしい。何もかもをお母さんから受け継いだと言える程であった。
「普通のチョコレートを作る位なら買ったのをそのまま出せばいいだけじゃないの?」
「そうよね」
 麻紀子もお母さんの言葉に頷く。完全に同意であった。
「それ位なら」
「作るんなら特別なチョコよ」
 両手は荷物を持って塞がっているので動かすことはできないがその顔に満面の笑みを浮かべて言ってみせるのであった。
「だからよ。腕によりをかけてね」
「私も」
 やはり麻紀子も同じことを考えて言うのであった。やはり完全にお母さん似であった。というよりかは最早完全にクローンであった。
「彰浩君の為に特別のチョコレートを作るわ」
「いい、麻紀子ちゃん」
 お母さんの声がここで完全に真剣なものになる。
「何?」
「作るからには真剣勝負よ」
 その真剣な声での言葉である。
「いいわね」
「ええ、勿論よ」
 麻紀子も最初からそのつもりだ。彼女なりに手を抜くつもりは全くないのであった。
「凄いの作るんだから」
 家に帰ると決意とその他のものを胸に秘めてチョコレートを作るのであった。作りながらカレンダーを見るが彰浩とは全く違う見方になっている。
「見ていなさい」
 誰かに対しての言葉であった。
「きっと凄いの作るんだから」
 その誓いをあらたにして作り続ける。幾ら徹夜しても平気であった。そして運命のバレンタインデー。周囲の騒ぎをよそに彰浩は自分の教室の自分の席で憔悴しきった顔になっていた。

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