アインクラッド 後編
それが、本当のわたしだから
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を丸くしたが、すぐにいつもの無表情に戻ってしまう。ちょっぴり残念だな、と思っていると、再びマサキ君が口を開く。
「……何故、ここが分かった」
「教えてもらったの。アルゴさんって人に」
「……あの鼠め」
マサキ君は苦々しげに舌打ちすると、木でできた家のドアを開ける。
「入ってもいい?」
「勝手にしろ」
冷たい声だったけれど、何となく拒絶されている風には感じなかったから、わたしはマサキ君に続いて家に上がった。
家の中は、外から想像していたよりもずっと暖かく、そして明るかった。白を基調としたシンプルなデザインと、陽の光を取り入れる大きな窓がそうさせているのだろう。部屋には暖炉もあったが、使われている風には見えなかった。確かにこれだけ暖かければ、使う必要も滅多にないのかも知れない。暖炉とは反対側の壁際には、アイテム収納用の棚があり、その上に一枚の写真立てらしきものが伏せられていた。
「まあ、座れ」
勧められた、リビング兼ダイニングらしき部屋の中央に置かれた白木造りのダイニングテーブルセットに腰掛ける。入り口側のカウンターを越え、その先のキッチンへマサキ君が向かうのを見送ると、わたしは一度部屋をぐるりと見渡した。
玄関から見て正面に、今わたしのいるリビングダイニング。恐らくその間の廊下右側がカウンター越しに見えるキッチンで、後はその逆側に小さな部屋が一つと中くらいのが二つ。この世界ではトイレと言うものが存在しないことを考えると、小さいのがお風呂、中くらいのが寝室ではないかとわたしは推測した。
「ほら」
事務的な声と共に、目の前に一つのカップが置かれた。白い湯気をほかほかと吐き出しているコーヒーが、カップの中でさざ波を立てた。
「あ、ありがと」
「ふん」
マサキ君は鼻を鳴らすと、自分の分のカップを持って対面に座る。そしてまずコーヒーに一度口を付けると、椅子の背もたれに身体を預けて口を開いた。
「……それで。用件は?」
「えっと、お礼がまだだったから」
「お礼?」
「うん。お礼」
わたしの答えが予想外だったのか、マサキ君はまた驚いたような声で言う。マサキ君の表情が、珍しく様々な感情に移ろっていくのが面白くて、わたしはクスリと笑いながら頷く。ゆっくりと木の匂いがする空気を吸い込む。両手で包んで持ち上げたコーヒーカップに視線を落として、今までのこの世界での一年間を思い浮かべながら、今、心に残っていた温かい思いを空気と一緒に素直に吐き出した。
「……わたしね、ずっと友達が、絆が欲しかったんだ」
――孤独だった。
「でも、断られるのが怖くって、中々それを言い出せなくって……それで、あんなことしてた」
――寂しかった。
「分かるわけないよね、そ
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