頂点にいた者の執念
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「あの内戦で使われた現皇帝の遺伝子データだが、おそらく地球にデータが残っているはずだ。
表向きは地球環境改善計画でフェザーンが投資したプラントコロニーが、太陽系のどこかに隠されている。
帝国内の権力争いをダシに、フェザーンが和解をもちかける切り札がそれさ。
傘下企業のウィーナスメディアを使って、皇帝の隠し子を発見させる。
その子、おそらくは女子だろうに皇位継承権をつけて、娶らせて、その子に帝位を継承させる。
相手側の遺伝子データもあれば、子供も作れるからな」
都合のよい時に都合のよい後継者を都合よく作れる。
人形師が推進したクローンとコーディネート技術は科学の暴走によってそこまで突っ走っていたのである。
そして、その商品価値を真っ先に見出したのがフェザーンという事なのだろう。
さすが商人国家とヤンは心の中で拍手せざるを得なかった。
「さてと。
ここまで話したのだから、私の頼みを聞いてくれないだろうか?」
何の見返りなしに話をするとはヤンも思っていなかった。
とはいえ、ヤンの権限でできる事は限られている。
「准将程度の私にできる事でしたら」
「なんのなんの。
730年マフィア最後のお気に入りで、軍にも政界にも道が開けている君の頼みを断る人間はこの同盟内部にはそうはいないよ。
何も君一人で帝国を滅ぼせとか言うつもりは無いよ」
冗談なのだろうが、笑えないのでヤンは無理に笑顔を作らざるを得ない。
事実、准将になってから、格段にパーティーや研究会という名を借りた派閥勧誘の誘いが増えているからだ。
仕事が無かった理由もそれで、まずはコネを作れという意味合いがあったのたが、ヤンはそれが非公式の命令だったのを良い事にサボりまくっていたのだった。
で、やっかいな仕事を手に怖い先輩がやってきて、こんな場所でこんな事をしている。
なお、ヤン本人はどう見られているか気にしていないが、周囲は現在我が世の春である同盟国防族に連なる新進気鋭のエースと認識していた。
「で、私に何をしろと?」
「何、君が絡んでいる計画に、手直しをして欲しいのさ。
ワレンコフ氏だけを戻しても、ルビンスキーを抑える事は難しい。
地球教側でどうしても彼を支える人間がいる」
そういって、ド・ヴィリエ元大主教はヤンの顔に近づいてその要求を告げる。
その声に張りが戻り、ぎらぎらした野心を隠そうともせずに、彼はヤンにその要求を告げた。
「私もその計画に一枚噛ませろ」
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