頂点にいた者の執念
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距離と人の欲は変わらないという普遍的事実を見せられて、ある意味ヤンはおちついた。
派閥争いこそ、歴史の主役だからだ。
救いようの無い事に。
「ご名答。
ワレンコフ前自治領主がフェザーン・同盟出身閥に取り込まれたので、地球教は強引に粛清して箍をはめなおす必要があった訳だ。
その同盟担当が私で、フェザーン担当が……」
「ルビンスキー現自治領主」
ド・ヴィリエ元大主教は首を縦に振ることでその答えに正解を出した。
つまり、現在のフェザーンの対帝国和解方針はそこに理由がある。
「彼自身は有能だが、まだ私と違って自治領主の座に据えてくれた地球教の影響力を排除できない。
帝国の弾圧が地球にまで及んで地球閥の力が無くなれば、話は別だけどね。
だからこそ、彼を蹴落とすならば、今が格好のチャンスという訳だ」
「ならば、帝国の弾圧まで待つという選択肢を同盟が取れるのですが?」
ヤンの分かりきった質問にド・ヴィリエ元大主教が楽しそうに笑う。
その選択肢が無い事はヤンもド・ヴィリエ元大主教も無い事が分かっているからある意味確認でしかない。
「帝国内部はブラウンシュヴァイク公とリヒテンラーデ公の対立が激化しているというのに?
フェザーンは既にリヒテンラーデ公側に接触しているだろうよ。
私がルビンスキーならばそうしている」
帝国宮廷内にいるフェザーンロビーを駆使し、内戦に勝利したブラウンシュヴァイク公を牽制するためにリヒテンラーデ公側に肩入れする。
同盟はフェザーン内部の工作と捕らえているようだが、フェザーン自治領主を抑えるという事は、対帝国和平すら望めるという事をヤンは再認識せざるを得なかった。
「気になったのですが、先の帝国内戦にてフェザーンはリッテンハイム侯側に全額賭けていましたね。
あれはどうしてなんですか?」
ヤンは先の帝国内戦のフェザーンの不可解な動きについて質問をする。
商人ならば勝っても負けても損はしない賭け方をするのに、あの内戦では負け側に全額を賭けて現在の苦境を招いている。
それにド・ヴィリエ元大主教は少し視線を上にむけて思い出すように答えた。
「簡単な話さ。
損をしない賭け方をすると、どうしても同盟やフェザーン出身閥に声をかけなければいけなくなる。
それに、皇帝のクローンという切り札を抱えて、我々の手で戴冠させれは、地球教は帝国の国教も夢ではない。
地球の総大主教をはじめとした面々はその夢に酔ってしまっていた。
見事に二日酔いの悪夢に悩まされる事になったがね」
これもフェザーンの国力増大で、具体的なプランが実行に移せるだけの力があったからこそだったりする。
実現可能そうな夢は、つらい現実よりもたちが悪い。
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