頂点にいた者の執念
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輩がそのあたりの手抜かりをした事はまったくないからだ。
なれた手つきで、ヤンの言った関係各所の判子が押された書類を机におきながら、キャゼルヌは意地悪そうに口を開いた。
「安心しろ。
お前好みの仕事だ。
軍のネットワークニュースは見ているな?」
「今、見ていたところですよ。
何しろ暇なので」
反撃にもなっていない皮肉をヤンは言うが、案の定キャゼルヌには通じていない。
彼も携帯端末を出して、ある一人の人物を画面に映す。
ヤンはその人物を見た事があった。
「アレクセイ・ワレンコフ代将相当官。
お前さんが以前助けた、フェザーンの大物さ。
情報部を中心に、彼を帰還させてアドリアン・ルビンスキー現自治領主を追い落とそうとする計画が動いている。
お前さんにやって欲しいのは、彼の帰還に伴うフェザーン内部の権力闘争のモデル構築だ」
「それで私の所に来た訳だ。
君も酔狂だね」
「そうですね。
私もそう思いますが、お話を聞かせてもらってよろしいでしょうか?
アルマン・ド・ヴィリエさん」
「構わないよ。
私で答えられる事ならば、答えよう」
ハイネセン某所。
人気の無いセーフハウスでド・ヴィリエ元大主教は楽しそうに笑う。
彼の存在は緑髪の副官経由で示唆されていたが、彼との対面にはかなりの書類と根回しが必要だった。
それを翌日にはこうやって顔を合わせているのだから、緑髪の彼女達とキャゼルヌ中将はどんな魔法を使ったのかとヤンは考えて止めた。
ド・ヴィリエ元大主教の笑顔に隠された視線のきつさから、彼がまだ野心を枯らしていない事を知りつつヤンは相手の言葉を待つ。
「まずは、フェザーン内部の統治組織について話をしよう。
君も知っている表向きの話をするが、構わないかね?」
「構いません。
こちらもそのあたりは関係者の口から確認したい所でしたので」
このあたり知識欲を満たしてくれるので、ヤンは前振りの話でも好んで聞くくせがあった。
それは学者を目指していたヤンの趣味と言っていいのかもしれない。
「まずは大前提。
フェザーンは帝国の自治領だ。
だから、自治領元首は帝国皇帝になる」
意外にこれは大きな問題だった。
地球教内部で自治領主は決められるが、表向きは銀河帝国皇帝の承認が必要になるのだ。
それをどうクリアしたのかという所を、ド・ヴィリエ元大主教はあっさりとばらす。
「まぁ、こちらが提示した自治領主を皇帝が蹴った事は無かったが、同時に自治領主就任において多額の金銭が帝国宮廷に流れた事も事実だ。
現在関係は最悪と言っていいが、このあたりは下手に変えないほうがいいだろう。
本当に終わらせ所を見失う事に
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