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バレンタインは一色じゃない
2部分:第二章
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第二章

 とにかくバレンタインが不安だったが。カレンダーは何があっても進んでいく。彰浩は次第に運命の日が近付いてくるのを見ながら不安に苛まれるのであった。
「バレンタインが怖いみたいだな」
「怖いよ」
 自分の部屋でクラスメイトに携帯で電話をする。部屋着に着替えてリラックスしている筈だがその顔も声もリラックスとは程遠いものであった。
「だってさ、麻紀子ちゃん何するかわからないし」
「だよな。何か御前そのことすらも中々言えないだろ」
「うん、そうだよ」 
 そのことを相手に対して述べてみせた。
「だってさ。やっぱりバレンタインに」
「彼女からチョコレートを貰えるのはそれだけでかなり幸せだぞ」
 クラスメイトもそれを言うのであった。やはり誰が見てもこうであった。
「それはわかっているよな」
「わかっているよ。だからさ」
 彰浩もそれに応えて言う。
「御前に言ってるんだろ」
「彼女持ちの俺にか」
「そうだよ」
 それをはっきりと言うのであった。
「他の奴に言ったらそれこそ」
「バレンタインの前に死ぬな」
 そういうことであった。彼女がいない相手にとってはこんな話は夢物語だ。それを話せばただでは済まないのは言うまでもないことである。
「それも確実にな」
「だから言えないんだよ。困ってるんだよ」
「中に何が入っているかとかか?」
「うん」
 その不安もあった。
「ボンボンとかそんな有り触れたものじゃないよね」
「タラコとかか?」
 間違ってもチョコレートには入れないものである。
「あと梅干とか小豆とか」
「それで済めばいいけれど」
 もっと凄いものが入っているかも知れない、彼はそう思うのだった。
「椎茸とか塩辛とか」
「想像しただけで食欲がなくなるな」
「けれど有り得るよね」
 それが問題なのだ。
「実際に」
「可能性は高いな」
 彼もこう言葉を返すのであった。
「その程度はな」
「その程度だよ」
 それもまた問題であった。
「もっと凄いのになるかも」
「何キロもあるチョコレートとかな」
 今度は大きさについて言及された。
「それか等身大のチョコレートとか」
「まさか」
「いや、普通にあるでしょ」
 しかし彼はその可能性を捨ててはいなかった。
「全然普通に」
「彼女だからなあ」
「有り得るよ、本当に」
 本気でこれも危惧していた。何が起こってもおかしくはないと思っているのだった。それを隠すこともどうしてもできないのであった。
「本当にさ、何が起こってもね」
「覚悟を決めるしかないな」
 クラスメイトもこう言うしかなかった。
「やっぱり彼女がいるだけ凄くいいことだしさ」
「そう考えるしかないんだ」
「そういうことさ。わかったら」
 念を押すように
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