第10話 愛の在り処
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てみても、分かった事と言えばそれくらいの、実に下らない情報以外にはなかった。何故、突然そんな事を高田がする気になったのか、小倉には分からない。顔をしかめるようにぎゅっとつむられたその瞼の裏に、何が映っていたのかも分からないし、その苦しげな喘ぎの裏に隠された、悲壮の程度など、想像する事もできなかった。結局の所、高田との心的距離など、縮まってはいない。
世のカップルというのは、アレを究極の"愛"の形態かのように思ってるらしい。そんな事を話してるのを、小倉はそこかしこで聞いたし、アレさえできれば幸せを感じる事が出来ると思ってそうな、まさに幸せな思考回路の連中もウヨウヨしている。しかし、物理的距離が縮まった所で、それが何だと言うのだろう。アレをヤレる関係であれば、即ち分かり合えるという事ではない。相手を布団の中に上手に連れ込める事を、まるで相手を理解できているかのように自慢する輩は、もう少し理解の難しさを分かった方が良い。快楽の有無だけを問題にしているのなら、それは相手の身体を使った"自慰行為"に勤しんでいるだけで、それは相互理解とは何の関係もない。
男女の関係を築く上で、行為としてそれ以上のものがないと思われているのが、アレだったが、ゴールなはずのそこを過ぎても、一切何も変わることのない自分と高田の関係に、小倉は自分と彼女の限界というものを感じずには居られなかった。
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「なぁ、田中」
「何?」
「愛ってなんだ?」
いつものように昼休み、田中と外のベンチでコッペパンをかじっていた小倉は、単刀直入にこう尋ねた。田中はふふっと笑うが、それは真面目くさってこんな曖昧な事を聞いてくるおセンチな態度に対しての、笑いではなかった。
「……何で俺に、そんな事を聞くんだい?」
「……お前、モテるだろ?」
「それとこれとは、繋がらないなぁ」
田中は今度は声を上げて笑う。活発さに満ちた張りのある声が、校庭に響いた。
「俺はまぁ、それなりにモテるかもしれないさ。自分で言うのも何だが、顔も良いし、性格も良いやつそのもの。嫌われるとしたら、一方的な嫉妬によるものくらいだよ」
「……否定はしない」
「でもね、それは愛ではないよ。俺に寄ってくる女の子は……彼女らの中では、自分が一番俺の事を知ってるつもりでいるみたいだけど……でも結局、俺の事なんて、よくは知らないんだ。彼女らの中で出来上がった、田中智樹という名前と、俺の見た目を持った虚像に惹かれているだけなんだよ」
田中は眉をハの字にした困り顔で、肩をすくめた。小倉はコッペパンの最後の一口をサッと口に運んで飲み下し、飄々としている田中を睨んだ。
「……それを言
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