第10話 愛の在り処
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たはずなのに。
「あいつ、研修期間中ずーーっとゴミだったじゃん。あいつのせいで罰受けた事なんて、いちいち数えちゃいられねえぞ。何でか、しぶとさだけは一人前で、脱落こそしなかったが、本来ならとうの昔に、無能さが理由で処分されてるよ。何で局長、こんな奴キャンプに残してるんかなーって、俺不思議だったけど、多分あれだぜ?一応優等生な俺かお前とペア組ませて、ハンデつけるのが目的で残してたんだぜ?ま、その役目も終わって、生かしとく理由も無くなったんだろ」
「…………」
体の力が抜け、隣を見るべく捻られていた体が、元の仰向けに戻った。元々、力なんてほとんど入ってなかったけど、それでも中に一本通っていたはずの芯までもが溶け伏して、自分自身が泥の中に沈み込んでいくような気がした。気がつくと、見上げた天井が、ボンヤリと滲んでいた。溶けた自分の芯が、熱い水滴となって、目から浸み出してきた。
「……おいおい、何でお前が泣くんだよ?あいつ、元々前科8犯なんだぜ?社会のルールに則って、真面目に平凡に生きることもできないし、その癖、必要悪にもなり切れずに、非力な善人面してきやがる、クズの中のクズだ。再利用もままらないクズなんだぜ?あんなクズには、お前の重石となるくらいしか使い道が無いんだ。お前が、あいつを生き長らえさせてやってたようなもんなんだ。……なのに、何でお前が泣くんだよ」
隣の男が呆れた声を出す。その言葉の中身は、理解できないでもない。しかし、涙は一向に止まらなかった。小さな嗚咽を漏らしつつ、自分は泣き続けた。
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11月になると、学校でも皆冬服になり、カッターシャツの白があまり校内に見られなくなっている。女子の中にはカーディガンを着てきたり、膝掛けを持ってきたりする者も居て、生徒指導の先生との校則違反か否かの不毛なやり取りがそこかしこで繰り広げられるようになってくる。寒いだのなんだのというのは、ただ装飾物を増やしたいが為の口実に過ぎない事が多く、冬は冬でも、まだまだ真っ盛りではない。しかし、寒いとか何とか、身体的苦痛を傘に着られると、途端に強く言えなくなってしまうのが、この、権利意識を肥大させてしまった社会の、学校の先生たちだった。
「……」
小倉は、今日も1人で席につき、静かに本を読んでいる高田の後ろ姿をちらっと見た。高田は紺のブレザーをキッチリと地味に着こなしている。ふと、半月ほど前の事が思い出された。小倉は、このキッチリと着こなされた制服の下に潜む、高田の生身を知っている。白い肌、無駄が削ぎ落とされたかのような控えめな身体のライン、うっすら滲んだ汗の匂い、少し苦しげな息遣い……
体を重ね、肌を触れ合わせ
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