トワノクウ
第二十一夜 長閑(一)
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」
今から思えばその事件というのもあまつき関連なのだろう。
「あれ? てこたぁ人間同士だろ。何でそれで混じり者なんだ?」
「元は人間なんですが、事情があって体をごっそり妖のものに取り換えました。平八さんのとこの先生もそういう方だと伺ってますが」
「私が何ですか」
第三者の声に肩を跳ねさせた。
校舎の中から出てきたのは布で目と口以外を覆った短髪洋装の男性だった。布の隙間から見える目はどことなく生気がない。
「あ、若先生」
「騒ぎが中まで聴こえてきましたよ――おや?」
彼の目は露草に留まり、細められた。
「お目覚めになったんですね」
「反応薄いじゃねえか。もっと喜んだっていいんだぜ」
「よりによって皮肉屋なとこをお兄さんに似せないでください」
「わざとだよ」
「でしょうね。五年の諸国漫遊ですっかり可愛くなくなって。ま、全快を祝して小言は控えてさしあげますよ」
親しい者特有の会話のはずなのにうすら寒い。話題を変えねば。それにくうも彼にあいさつしたい。校務員の平八が先生と呼んだからには、彼が梵天の言っていた人物のはずだから。
「あなたが銀朱≠ウんですか?」
男の顔は笑顔のまま、目の奥の色が深くなった。
「その名をご存知ということは、貴女は信用に足る人なんですね」
「えと、信用されてるかは分かりませんけど、教えてもらいました」
とりあえず事実だけを述べる。必要性が心証を上回る時もあるし、今回は極めてそれに近い。
「梵天はほかに何か言いました?」
「私と同じお身体だって」
「混じり者なんだよ、そいつも」露草が会話に割って入った。「死に体だったとこを白い鳳と溶け合って生き長らえたんだと」
「なるほど……それは確かにお仲間のようですね。――銀朱は昔の名です。私は菖蒲。この学校で教師をしています」
くうは慌てて頭を下げて礼をする。「篠ノ女空です! よろしくお願いします、菖蒲先生」
「よろしく、篠ノ女さん」
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