トワノクウ
第二十一夜 長閑(一)
[1/3]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
化物道を抜けると、香川の金毘羅大社を彷彿とさせる長い階段の前に出た。ブーツでよかった、とくうはしみじみ思った。
階段を登りきった時には、くうはヘトヘトだった。
「だらしない奴」
「つ、露草さんが、体力ありすぎなんですっ。ほんとに病み上がりなんですかっ」
「そう見えねえんだとしたらお前のおかげだろうよ」
ふえ、と不思議がる間に露草はさっさと歩き出してしまった。彼が進む先にあった建物に、
「わあ……っ」
くうは感嘆の声を上げた。
平屋建て東西校舎。瓦葺きの立派な屋根。褪せた木目と白壁のコントラストは武家屋敷のようだが、窓は一面ガラス張り。伊達綱宗が品川の伊達家下屋敷での蟄居中に輸入ガラスを買い求めて、木造家屋にガラス窓をつけたのが1660年だからおかしくない。趣深いが現代にも通じる様式の木造校舎だ。身も蓋もない言い方をすると、『○○の怪談』の舞台そのもの。
(日本最古の木造校舎って岡山県だった気がするんですけど……やっぱりあまつきは私達の世界の過去とは違うんですね)
てふてふ。玄関前で止まっていた露草を追う。
途中、校庭と呼ぶべき更地で遊ぶ子供たちを認めた。皆一様にくうに、そして露草に好奇心と興味を隠さない視線をよこした。ここが学校なら、あれは学童か。
(あれ、一人だけ外れてる子がいる)
樹の下で頬杖をついた女の子だ。その子は学童の輪の外から同世代の子供たちが戯れるのをただ眺めている。
ふいに、女の子と目が合った。
女の子は樹の下を離れ、くうのもとにやって来た。至近距離で女の子を見てやっと分かる。
彼女は、異人だ。
白人だ。目は翡翠色。手ぬぐいに覆われた髪も、はみ出た毛は金色だ。欧米人特有の凹凸のある体型は、着物と短い陣羽織を浮き立たせる。女の子は、はにかんだ。
(この子が平八さんが匿ってた例の子ですか)
露草の心で見た童女と特徴は一致する。
「な、ないすちゅーみーちゅー?」
童女は首を傾げた。英語が通じない。国際交流敗れたり。
「何してんだ! 早く来い!」
「はい、すいません!」くうは童女に向けて笑った。「ごめんなさい。これから用事なんで、失礼しますね」
くうは急いで玄関前に立っていた露草に追いついた。
校舎は、近くで見ると板の目の褪せ方がいっそう時代がかっていて、歴史好きのくうはドキドキした。
「ここが銀朱≠ウんのお住まいですか」
「まあな。男やもめになってからここで教師の真似事してんだ」
露草は大きく息を吸って吐くと、全力で扉を蹴飛ばした。これまた時代がかった石の三和土と木の廊下が現れる。
(って蹴飛ばした!?)
「いるか不良教師ー!」
(しかも第一声がそれ
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ