十四話:ちょろ甘だな
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とじっとしててくれ」
「え? は、はい」
「よし、それじゃあ、今から破けた所を縫うからな」
…………何だって?
今、彼はなんて言ったんだい……?
恐る恐る見てみると彼の手には針と糸が握られていた……間違いない彼は―――
「ほら、直ったぞ」
「わあ、凄いです! あっという間に元通りです!」
裁縫スキルも持ち合わしている!!
僕達の認識が甘かった……料理、掃除とくれば裁縫が得意でも何も可笑しくない……。
ルドガー君……君はお母さんか何かかい?
「ルドガーさんは裁縫も得意なんですか?」
「ああ、手編みのマフラーとか手袋も作れるぞ」
「ま、負けました……」
その言葉を聞くと同時に何故か朱乃さんが崩れ落ちた。
多分、女性として男性に家庭的な所で負けたのが堪えたんだと思う。
ただ、ルドガー君が異常なほどの女子力を発揮しているだけで気にすることはないと
思うのは僕だけだろうか?
とにかく、一先ず、撤退して作戦を練り直さないといけないだろうね……。
【作戦その二:もう、素直に頼もうぜ? 作戦】
これはイッセー君発案の作戦で、その名の通りに諦めて素直にトマトを使わないように
頼むと言う作戦とは言えないような作戦だ。
だが、残された時間が少ない以上はこれしかない。
「ルドガー君、実はお願いがあるんだけど」
「祐斗か、どうしたんだ?」
「単刀直入に言うよ、トマトを使った料理以外を食べたい」
次の瞬間、僕はルドガー君の鋭い剣が襲い掛かってくるのではないかと
身構えていたがルドガー君はただ、何かを考える様に下を向くだけだった。
「難しいのは百も承知だよ、でも――「いや、別にいいぞ?」――そうかい、やっぱり無理だよね……へ?」
「だから、いいって。確かに最近は使い過ぎだったしな。飽きたんだろ?」
「そ、そうだね」
「それじゃあ、飽きないようにするから今日は楽しみにしておいてくれよな」
そう言って台所に消えていくルドガー君を茫然と見送る。
これで……本当に終わりなのかな?
「ああ……赤くない……本当に赤くないわ」
食卓が赤く染まっていないことに涙を流しながら食事を食べる部長。
他のみんなも同じような感じだ。かくいう僕も涙が止まらない。
ああ……やったんだ。僕達はやり遂げたんだね…っ!
そうして感動していたためだろうか、食卓からルドガー君と小猫ちゃんが
揃って離れていったのにも気づかなかったのは………
「……上手く行きましたね」
「ああ、トマトが入っていると気づかせずに食べさせる料理は昔から研究してたからな」
「……さすがです、ルドガー先輩」
「ありがとうな。それにしても……ちょろいな」
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