十四話:ちょろ甘だな
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く気にしている素振りなど
見せていなかった。むしろ、美味しい料理を食べられることに喜んでいるような
印象を受けた……。
「小猫は好き嫌いが無い子だから、何でもよく食べるわ」
「で、でも、流石に毎日毎食トマトだと飽きるんじゃないんすか?」
「普通はね……でも、小猫はその域を超えてしまったのよ。美味しければそれでいい、それもお腹いっぱい食べれればもっといい……きっとそう思ってしまったのよ」
「そ、そんな……」
悲しそうに顔を俯けるイッセー君、そしてそれに比例するように部屋の空気が重くなる。
確かに、小猫ちゃんの考えも分からないことじゃない。
僕達が毎日食べて飽きてしまったのは味の方じゃない、あの赤色だ。
ルドガー君の料理ははっきり言って絶品だ。プロと言っても通用するだろう。
さらには同じ料理でも飽きが来ないようにアレンジを加えたりしているので
あの忌々しい赤色さえ何とかなれば毎日でも食べていけるだろう……
あの赤色を克服できればだけどね。
その点では小猫ちゃんはそれを克服した身なのだろう。
僕達と違い以前から度々ルドガー君に料理を作ってもらっていた小猫ちゃんは
恐らくは知らず知らずの内に耐性が出来上がっていたのだろう。
そして、彼女は―――
「はっきり言うわ……小猫は―――胃袋を掴まれたのよ」
「そんな!」
アーシアさんの悲しげな悲鳴が静まり返った室内に静かに響いて空しく消えていく……
みんな、顔を上げることが出来ずにただ辛そうに何もない空間を睨みつけるだけだった。
「………望めばいつでも美味しい料理が食べられて、おやつやデザートもあっという間に作ってくれる。おまけにルドガーは文句を言いながらでも好きなだけ食べさせてくれる。……傍から見ればルドガーがパシリに見えるかもしれないけど、
実際は違うわ………餌付けされたのは小猫の方よ」
だからこそ、小猫ちゃんはこちらにつかない。
それどころか僕達の敵となって立ちはだかるかもしれない。
まったく……あの小猫ちゃんを餌付けするなんて恐ろしいよ、ルドガー君。
「だからと言って、諦めるわけにはいかないですよ……例え、小猫ちゃんが俺達の前に立ちはだかるとして俺達は献立を変えないといけない。……そうですよね、部長?」
「そうね……イッセーの言う通りだわ。私達は何としてでもルドガーから台所を取り返して献立を変えないといけない。それが私達の未来を守る唯一の方法だもの」
そう言って、部長がスッと立ち上がり僕達を順番に見下ろしていく。
そして大きく息を吸い込み口を開いた。
「みんな……『台所奪還作戦』を明日から実行するわよ!」
「「「「はい!」」」」
僕達の心は一つになり、絶対にこの作戦は成功すると思わせた
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