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う。彼女はその碧眼で、じぃっ……とこちらを見上げて。
「……《女神殺し》」
「……ッ!! お前、知っているのか……?」
二室の『かつての名』を呼んだ。
《覚醒遺伝計画》というものがある。『神為らぬ者』と呼ばれる科学者たちが、神話伝承や民話の英雄や神々の権能や技能を、一般大衆に無作為に与え、何らかの目的を以て野に放った計画だ。知らず知らずの間に被験者になっていた人々は、与えられた英雄や神格の性格や権能、時には記憶すら引き継ぎ、人類を超える。彼らは《伝承者》と呼ばれることになった。
そんな彼らの中には与えられた権能の元の持ち主の記憶に引っ張られ、かつて『己』が成し遂げた伝説を再現しようと暴走する輩まで出てきた。
《女神》と呼ばれた《伝承者》もその一人である。銀色の長髪、想像上の竜のような角と尾、傲慢な態度、ある特異な《覚醒遺伝》から来る強力な異能、そして美貌を兼ね備えた彼女は、一時世界最強の伝承者として君臨した。
だがそんな彼女も、あるときを以て滅びを迎えた。《女神》たる彼女の”伝承”に対抗する、もう一人の《神》が、彼女を殺害したのである。
その下手人が、他でもない二室自身。十年近く前、まだ幼かった頃の事。高校一年生の夏の事。もう一人の”最強”として知られた《伝承者》が、表舞台から姿を消した日の事。
だからもう、その名前の持ち主が自分であることを知っている人など、そうそういない、と思っていたのだが――――
これは一体、どういう事なのか。
「お前は……何者だ?」
外見はどう見ても十歳前後の少女である。将来は大輪の花を咲かせそうな美幼女であるが、それとこれとは関係ない。どう考えても、あの《女神失墜》事件よりも後に生まれた人間だ。それに、こんな知り合いはいなかったし、こいつの親も多分知り合いにはいない。
だから、自分の事を知っているなんてありえない――――そう思っていたのだが。
「……ティアマト。お前は――――」
少女は自分の名を言い、次いで二室に権能が《覚醒遺伝》しているとおぼしき《ソイツ》の名を言った。それは、二室以外の人間では、《女神》以外ではたった一人しか知らない名前。
その名前を出されたら、事情を察せざるを得ない。
こいつは――――十年前に、二室自身が殺した《女神》……メソポタミアの母なる女神《ティアマト》の《伝承者》と、同一人物だ。一柱の神格や英雄の権能が同時に別々の人間に覚醒遺伝疾患することはあっても、その場合は他人の記憶などは引き継がない…妙に親近感は湧くらしいが…。
故に、この少女は、あの女と同一人物なのだ。
なぜだ。何が起こっている。確かに殺したはずだ。生きてい
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