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カーテンの隙間から入ってくる朝日が目を射て、二室鈴斗は目を覚ました。見下ろせば、ソファーの上に、足を上に、頭を下にという奇想天外な格好で寄りかかっている自分。さらに床には、散乱したプリントの山。
――――どうやら寝落ちしてたらしいな。
昨日の夜中に資料を整理しようと思ってソファーに寄りかかり、そのまま眠ってしまっていたらしい。
これからこのプリント達を集め直し、再度整理しなければならないのだと思うと気が滅入ってうめいてしまうが、仕方ない。自分の責任だ。体を起こすと、べきべきという小気味良い音が鳴る。それを聞きつつ、散乱した書類を集め、整えていく。
そう言えば、昨日自分は資料整理を午前中にやってしまおうと思っていたはずだ。なぜそれが夜中になってしまっていたのか――――
そこで思い出す。
――――ああ、そう言えば、もうこのボロアパートの住人は俺だけではないのだ。
と。
とん、とん、とん、という軽い足音がする。振り返れば、隣の部屋の扉を開けて、一人の少女が入ってくるところだった。
年齢は10歳ほどか。綺麗な少女だった。
雪のように白い、きめ細やかな肌。四肢はまだ未発達だが、将来は相当な上物になるだろう。青にも緑にも見える碧色の瞳は、寝起きだからか眠そうに半分とじられている。
何より目を引くのは、星のように煌めく艶やかな髪。今は肩ほどまでに切りそろえられているが、かつてはそれが腰ほどまで届く美麗なロングヘアであったことを二室は知っていた。
「おはよう、TZ。眠れたか」
「……寝れた」
こくり、と首を縦に振る少女――――TZ。それを聞いて、二室も精一杯の笑顔を浮かべる。
「そうか。ならいい……すぐに朝食の支度をする。待ってろ」
「……ん」
同居人にしては固い会話を交わし、二室はキッチンへと引っ込む。
一応長い間一人暮らしをしてきたこともあって、自分では多少は料理ができると思っている。誰か客が来た場合は、一般的な味で良ければ振る舞えるだろう。
だが。
まさか――――
「昔殺した女のために、料理を作るとは思わなんだ」
そう。
昨日出会ったばかりの白銀の少女、TZは――――かつて《女神殺し》と恐れられた《伝承者》、二室鈴斗が殺した、《女神》自身の生まれ変わりだというのだ。
事態は、今から数えて20時間ほど前にさかのぼる。
***
その日、二室は、とある事情で集めていた情報を整理する目的で、大量の資料を広げていた。どれもすでに一度目を通したため、内容は記憶している。が、なまじ数が膨大であるためにどれがどれだか分からなくなりや
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