序文
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『全世界の老若男女の諸君、ご機嫌麗しゅう。我々はしがない科学者の集団だ。少し際物の研究成果を上げたために、今回諸君らに体感していただこうという次第である。名称は敢えて与えていない。強いて言うのなら我々の崇敬の系譜であり、諸君らの憧憬の結晶だ。それを踏まえて、我々はこの技術をこれから恒久的に世界に提供しよう。人類全てに大いなる力を与えよう。
我々は神には為れない――――だからこそ。諸君らを神格に。あるいは英雄に、祀り上げよう』
以上が、『神為らぬ者』と呼ばれることになる組織が、全世界に向けて発信した声明――――通称《『ヘレティック』の典礼文》である。
《覚醒遺伝計画》と呼ばれる、神格、ないしは英雄の権能や伝承を無作為に一般人たちに付与してしまう、《覚醒遺伝》と呼ばれる技術、それを無尽蔵かつ不規則に引き起こす計画。
被験者らの中には、『己』の逸話を『完成』させようと暴走する者達もおり、一部からは危険視されていた。
もっとも、とある集団がその爪痕を鎮圧してしまうため、人々は《伝承者》と呼ばれる、APの被験者たちが存在している、という事実と、ヘレティックの声明、そして彼らが元は国連の一機関であり、現在は脱退中・国際指名手配されていることしか知らない。
暴走した《伝承者》たちが引き起こす、凶悪極まりない人災と、その爪痕を隠蔽する者たちのことを知らない。
だが。
そんな何も知らない羊たちでも、たった一つだけ、過去に起こった事件の事なら聞いたことがあるはずである。
名を、《女神失墜》。当時最強と言われた《伝承者》が、たった一人の《伝承者》の手で殺されたという事件。
もちろん、詳細は知らない。だが、その事件自体は大体的に…その《女神》とやらが人類に対して危険な存在だったことは確かである。故に、『もはや危機は去った』という意味で…報道されたため、『ああ、そんなことがあったんだな』と記憶しているのだ。何せ、ほぼすべての局が《女神失墜》を報道したのだ。それは話題にもなる。
故に、その《女神》がどのような《伝承者》だったのか。
そしてそれを殺したのがどんな《伝承者》だったのか。
無数の憶測が飛んだ。
――――絶世の美女であった。否、想像を絶する醜い女だった。 誰もが慕う聖女のような人だった。否、誰もが嫌う悪女であった。
――――世界を破滅させられる異能者。否、何もできないただの少年。あるいは少女。否、老人、老婆。普段は何をしているのか。否、相討ちになって死んだのではないか――――
いつしか、その《女神失墜》の執行者の事を、人々は《女神殺し》と
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