8-2話
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と標的を変えて怒鳴り声を上げ始めた。
「効いてる効いてる」
耳を掠めて肉を削りかけたという恐怖は怒鳴る余裕をなくし、正体のわからない相手に対して威嚇する事に必死になっていた。
石を掠めた恐怖が周りに伝染し、動揺が場を満たした頃に男は襲撃者をその目で確かめてやろうと森に向かって一歩踏み出そうとした。
だが、その一歩が地面を踏む前に、地面が弾けた。
次いで一つ、二つ、何かが当たる音と共に悲鳴が上がる。
一歩踏み出そうとした者は何事かと思って振り返ると、地面に蹲る二人の男を見た。
一人は手の甲を抑え、もう一人はズボンの裾が切れた足を抑えていた。
血は出ているわけじゃない。 ただ掠めただけで皮膚が擦れて痛い程度のきわどい狙い所。
一歩を踏み出す気もなくしてやろうと、はじめに動いた男の足元を狙って出鼻を挫き、複数だと思えるように場所を変えてもう二・三個ほど狙ってやった。
壁になるものが一切ない開けた場所にいて、相手がどこにいるかわからない森という壁に阻まれて、なおかつ襲撃者という存在がわからなくて幻の脅威に晒されている。
身を隠せない。
相手が見えない。
数も何もわからない。
圧倒的にリーチの差。
獣のように理性を欠いた頭でも、これがいかに不利な状況かわかるはずだ。
心を占める感情が何なのか獣だってわかる。
さあ、こうなったらどうするか?
「くそぉ! 中に逃げろぉ!」
誰が言ったか、その言葉をきっかけに後ろを警戒するのも忘れて皆我先に鉄の鳥の中へと逃げ込み始めた。
後ろから狙われる事を考えないようにしているのに、捕虜にしているメガネ君とCAの事は忘れずに引きずって行った。
ここまでは想定内。 置いて行ってくれたら言う事なしだったのだけれど、紐で引っ張っているのではなく拘束している縄もどきを直接鷲掴みしていては引き離すのは無理だろう。
無理やり引っ張られて縄が食い込んで苦しいのだろう、CAは苦悶の表情を浮かべて涙目になっていた。
悪いけれど、今はこれで辛抱してほしい―――あとで来るから。
悪い結果だけど、時間を作るという意味ではこれで十分である。
危機感を煽って、あの二人をどうこうしようとは考えないだろうけど…それも冷静さを取り戻すのに15分か20分くらいだろう。
「……もう10分ほど伸ばそう」
考えてみれば赤神もいるのだった。 彼女を連れてとなると余計に時間がかかってしまう。
思い直して投石紐に石を番えた。
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