8-2話
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ない。 獣によってか、あるいは人によってはわからない。
少なくとも、あそこにいる二人よりまずい事だ。
「そのために、先に拾っておくべきだわ。 二人には気の毒だけどね」
「でもこのまま見捨てては…!」
「誰が見捨てるって言った?」
アタシは懐に手を伸ばした。
取り出したのは、紐のようなもの。 片方の端には指を通す輪があって、中央辺りにはやや幅があるしなやかな紐だ。
「それは?」
「投石紐よ。 ちょっとここで隠れて待ってて」
アタシはブーニーズハットを被り直し、拓けた場所を迂回するように移動しようとする。
「…っと、その前に」
足を駈け出した直後に一旦止まり、赤神りおんの方を向いて指先で指すように腕を伸ばす。
アタシの“意思”を伝達させると、肩に乗っていた小動物は腕を伝って赤神りおんの胸元へと飛び込んでいった。
「きゃっ!?」
「その仔もお願いね」
顔を確かめるように赤髪りおんを覗きこむ小動物を見届け、アタシはこことは別の位置に向かって森の中を駆けた。
頭を低く、目立つ蒼髪はブーニーズハットと草木に隠れながら、女豹のような地面を這うような動きで、草木に紛れながら赤神りおんとは違う場所へと迂回する。
―――距離は45…いや、46メートル。
「…よし、この位置からで狙おうかしら」
少し離れてるけど、向こうの様子と怒鳴り声が伝わってくる。
いよいよと爆発しそうな空気の中、息を潜めて弾丸として手頃な石ころを拾い、紐の中央に包み込むようにして装填する。
投石紐、それはとてもシンプルな武器で、旧約聖書のサムエル記において羊飼いのダビデは巨漢ゴリアテを倒したとさえある。
これによって放たれた石は、弓矢と同等以上の射程でありながらヘタすると人体を貫通する事も可能になる代物だ。
ゆっくりと円を描くように紐を振り回し、石ころが包み込まれた皮部分が遠心力で縦回転してその回転速度から運動エネルギーが起きる。
狙いは一番怒鳴っているうるさい男、その耳。
笛のように風を切る音を鳴らす紐をその男に―――それを解き放った。
ピュゥ、と風切る石弾が近づいている事も知らず、男の耳を掠めた。
「―――ぎゃああああ!!?」
けたたましい悲鳴が上がった。
ちょっとは痛いだろうけど、たかだが耳を掠めて皮一枚を削った程度で激しく流血するほどでもないというのに。
だけど、不意を突かれて耳を削りかけた恐怖は意識を逸らすには十分だった。 男達は周囲に目を向け、真理谷達から森にへ
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