8-2話
[1/7]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
目の前には鬱蒼とした林が立ち塞がっている。
生やし放題に成長した樹木が乱立しているその密度は、雑踏の人集りよりも険しいものだ。
真っ直ぐ進んでも人と違って、目の前にそびえ立つ樹木は避けてはくれない。 だからそれを避けようと繰り返せば足取りがブレる事になる。
人はそれに方向感覚を失って、真っ直ぐ進んでいるつもりでも目印もない森の中では足先を見失う。
でもアタシにはそんなの関係ない。
草をかき分け、木の根を跨いで進む足取りに遅滞する余地はなかった
目の前に樹木があれば、あらかじめ傾いていた体は緩やかに足先の向きを変えて、流れるように横を通り抜ける。
木の根があれば、足場が悪いそれに躓く事なく、逆に踏み台にしてすいすいと進んでいく。
障害物はアタシにとって平地のそれと大した差はないのだ。
そう…平地と大差ないのだから、こうして早歩きなんてしなくても、アタシなら森の中を風のように駆け抜ける事が出来る。
しかし、そうもいかない理由が後ろで必死についてきているからだ。
「はぁ……はぁ…ま、待ってくださいっ…」
背後で息の荒い疲れた声をかけられた。
何度目かに呼び止めに振り返って、その姿を見やる。
木に手を当てて、息を整えようと足を止めていた赤神りおんがいた。
また少し距離が離れてる。
アタシは終始同じペースで早歩きしているのだけれど、赤神は逆にペースを落としているようだった。
やっぱり、野生慣れしていない一般人だとこの森は厳しい。
もうちょっと急ぎたいのだけれど、アタシの早歩きと一般人の走りとじゃ生い茂る森の中でのペースに差がある
歩幅が全く乱れる事なく突き進んでいくアタシと違い、段差のある地面、木々などの障害物が邪魔になって時々足がもつれるものだからまともに進めていない。
この場で彼女を振り切って、アタシが少し急げば森を抜けるのも簡単だ。
しかし見つからないように避けているとはいっても、大型の絶滅動物がチラホラといるこの森の中で置いていくわけにもいかない。
「さっきのアレは良くなかったわね…」
チラリと後ろを見やると、慣れない悪路で必要以上に体力を消耗しながら付いてくる赤神りおんがいる。
それでも喰らいつくようにアタシに付いてくるのは、アタシが先ほど口を滑らせた言葉のせいだろう。
赤神としてはアタシが口を滑らせた内容が気になるのだろうけど、今はそれを答えてやるつもりはない。
自分でもまだ状況は理解出来ていないのだから、今それを確かめようとしている。
なぜそれがわかるか。 その理由はアタシの肩に乗
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ