第9話 ゼロ距離の彼岸
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は思ってないが、でも、お前くらいなんだぜ?高田とあんなに話が続くのは」
「……?俺、そんなにあいつと喋ってないですよ。それこそ数えるくらいしか」
「文化祭の日、2人で居たろう?あんな冷たい態度の奴と2人で居れるのはお前くらいなんだよ。俺だって、あいつとの面談は苦手なんだ。俺のボケ全く拾ってくれんし……」
個人的な恨み節が混ざってしまった葉鳥は、調子を整えるように咳払いし、ビシッとキレのある動きで小倉を指差した。
「とにかく、これを届けに行って、高田が何か手伝って欲しそうなら、手を貸してやるんだ!一人暮らしで病気するのは、結構メンタル削られるんだぞ?部屋に篭ってると、世界中の誰もが自分なんかの事、気にもかけてくれないんだって、そんな事考えちまう。一人でも見舞いにくりゃ救われるもんだ。もう3日も休んでるんだ、さっさと行ってやれ!」
「……必要とは思えませんけどね……あと、部屋に籠っての下り、先生の体験談ですか?意外と可愛いところありますね……一人で病んでるとか……」
「うるせーよ!まったく、口が減らねえなぁ!」
小倉は頭をはたかれ、追い立てられるように職員室を出て行った。10月も半ば、いよいよ季節は移ろい始める。夏の暑さはどこかへと消え失せ、冬の足音が聞こえる中、秋真っ盛りの微妙なバランスが保たれていた。
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《久しぶりに仕事を頼んだけど、どうだったかしら?》
「……いえ、それほど特別何かを感じた訳では……予定通り、手順通りにこなしただけですし……」
秋の風に吹かれながら、高田は街を歩いていた。電話越しに、「あの人」の声がする。ハキハキとして、張りのある、活力に満ちた声だ。聞くたび、こうなれたら良いのにな、そういう気分にさせられる。訓練によって、自分のボソボソとした語り口も多少改善されたが、それでも「あの人」に比べたら、暗くて無機質だ。そもそも、人としてのつくりが違うのだと思う。埋まらない差が、そこにはある。
《……嘘。少し手が震えていたわよ。やっぱり、手を下すのは辛い?》
「……それは……いつもながら、細かく見てますね……大丈夫です、平気です。何もない日常に慣れたせいで、緊張しただけで……甘えた事言ってられないのは、分かってますし……」
《そんなに否定しなくっても。あなたまだ、16歳なんだし。》
「……やっぱり、私に気を遣って、こういう立場に置いて下さっているんですよね。申し訳ありません……私が頼りないから……」
《そんなに気負わなくて大丈夫よ。今でも十分、役に立ってるわ。あなたに助けられてる部分は確かにあるんだから、もっと自信つけてちょうだい》
高田は唇を噛んだ。「あの人」と話す
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