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ソードアート・オンライン 〜Hero of the sorrow〜
フェアリィ・ダンス編 哀しみを背負った男達
響く鬼
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「いや、いい。魔化魍ごとあちらへ運べ!」
カナリアの光が、全員を包みこんだ。
ユキと同様の事態は、こちらでも起きていた。
再開する約束を立てた4人の一人である、アスナが帰ってきていないのだ。
自身の恋人である、アスナの寝顔を見ながら和人はぼそりと呟いた。
「なぜ、帰ってこない・・・?」
彼もまた、力があれば救えると思っていた。憂鬱な気分になり、アスナを取り戻す手段を考えていたところ、病室のドアが開いた。
「おお、来ていたのか桐ケ谷君。たびたびすまんね」
明日奈の父、結城彰三が話しかけてくる。俺は顔を上げ、口を開く。
「こんにちは、お邪魔しています」
彰三氏はアスナの髪をそっと撫でる。悲しんでいるのは、自分だけではないことがよくわかった。
そして、彰三氏の背後から、一人の男が出てくる。
「彼とは初めてだったな、彼はうちの研究所で主任をしている須郷君だ」
人がよさそう、というのが第一印象だった。長身をスーツに身を包み、顔にはフレームレスのめがね。
常に笑っているような顔が、こちらを見ていた。右手をこちらに差し出しながら、須郷と言う男は言った。
「よろしく、須郷伸之です。・・・君が英雄の一人、キリト君か」
「・・・・桐ケ谷和人です。よろしく」
ちらりと彰三氏の方を見ると、彼は顎を撫でながら軽く首を縮めた。
「いや、すまん。それは口外禁止だったな。あまりにもドラマティックな話なのでつい喋ってしまった」
「社長、あの件ですが・・・」
手を放した須郷が彰三氏に向き合う。
「来月に、話を決めさせていただきたいと思います」
「・・・そうか。しかし、君はいいのかね?まだ若いんだ、新しい人生だって」
「僕の心は昔から決まっています。明日奈さんが、今の美しい姿でいる間に・・・。ドレスを着させてあげたいのです」
「・・・そうだな。そろそろ覚悟を決める時期かもしれないな・・・・」
話の内容が見えず困惑していると、彰三氏がこちらを見た。
「では、私は失礼させてもらうよ」
そう言って彰三氏は体を翻し、病室から出て行った。残ったのは、須郷と俺だけだった。
須郷がアスナの髪に触れ、音を立ててすり合わせる。凄まじい嫌悪感が込み上げてくる。
「君はあのゲームの中で、明日奈と暮らしていたんだって?」
須郷の一言に、俺は答える。
「・・・ええ」
「それなら、僕と君はやや複雑な関係と言うことになるかなぁ」
須郷の顔が、ニタニタとした笑みへと変わる。
「さっきの話はねぇ・・・」
須郷は愉快でたまらないという、子供がプレゼントを貰ったようにニヤニヤしながら言った。
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