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水の国の王は転生者
第九十七話 ガリア介入
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地図を前に唸った。
 シュヴァルツヴァルトはその名の通り、鬱蒼とした森林地帯が百リーグ以上も広がる場所で、気時の間隔が狭く、太陽の光が遮られ昼でも薄暗いため、大軍が展開するには適さない地形だった。
 さらに悪い事にゲルマニア軍はシュヴァルツヴァルトの深い森の中に隠れて、どの位の規模の軍勢か分からず、何と幾つかの偵察隊がゲルマニア軍の規模を探ろうと森の中に入って行ったが帰ってくる者は居なかった。

「ゲルマニア軍も、当然私たちの位置を掴んでいるだろう」

「ゲルマニアの斥候らしき者どもを数十人を討ち果たしましたが、数人を取り逃がしてしまいました。総大将の仰る通り、ゲルマニアは我々の情報を掴んでおりましょう」

 シャルルの言葉に、ガリア遠征軍の総大将補佐的な存在であるブルボーニュ公爵も同意した。

「さて、機先を制してゲルマニア軍に速攻を駆けるべきか、それとも相手の出方を待つべきか、諸君の忌憚のない意見を聞かせてほしい」

 シャルルが会議に参加した諸将に尋ねると、将軍たちは議論を始めた。

「シャルル殿下、フランケン大公を討ち果たせば、ヴィンドボナへの道は開けたも同然です。ここは攻勢に打って出るべきです」

「否! 地の利は敵に在り、下手に攻勢を掛ければ被害を増やし、戦役そのものが継続不可になる!」

「敵は奇襲の混乱からまだ抜け出せていない。ここで軍を停止すれば、敵に迎撃態勢を取らせる時間を与えてしまう!」

「フランケン大公はすでに動き出していて、敵は奇襲の混乱から抜け出していると断定して良い。狩りの時間はは終わったと考え、早急な戦略の練り直しをするべき!」

 将軍たちの議論は攻勢と守勢と意見が真っ二つに分かれた。

「シャルル殿下、そろそろこの辺りで……」

 このままでは埒が明かない、とブルボーニュ公爵が進言すると、シャルルはコクリと頷き立ち上がった。

「皆の思いは良く分かった。遠征を始めたからには、必ず勝利を得なければならない。フランケン大公は強敵だが、討ち取ることが出来れば早期講和も可能だ。きっと降臨祭までには帰れる!」

 シャルルは攻勢にかかる事を将軍たちに宣言すると、『おおっ!』と将軍らの反応も良かった。
 ブルボーニュ公爵は、演説の効果を得たと考え、将軍らに散会を命じた。

 将軍らがそれぞれの持ち場に戻ると、ブルボーニュ公爵がシャルルに進言した。

「シャルル殿下。フランケン大公と対峙する前に、ヘルヴェティア地方の戦力を削がなくては、後方が危うくなります」

 主に傭兵を産出するヘルヴェティア辺境伯領は、ガリア、ゲルマニア、ロマリアの三カ国国境に接していたものの、山々に囲まれた辺鄙なところで戦略的に価値が無い事から、ガリア軍は侵攻の際無視する形で素通りしていた
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