第九十七話 ガリア介入
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た。
その夜。
シャルロットは既に眠り、シャルルは愛妻であるオルレアン公爵夫人と軽い晩酌をしていた。
オルレアン公爵夫人は不審そうにシャルルを見ながらホットワインを口に運んでいた。
「……」
「……今回の出兵に反対の様だね」
「……はい、シャルロットも大きくなってきて、これから大事な時期だというのに、何故、離れ離れになるような事をなさるのです」
オルレアン公爵夫人は、シャルルがゲルマニア出兵で幼いシャルロットや自分を置いていくことを責めた。
一方、シャルルとしても、シャルロットや愛妻を置いてゆくのは忍びないが、今、このチャンスを逃せば、兄ジョゼフが王位を戴いてしまう。
ジョゼフへの対抗心を露わにしたシャルルは、ゲルマニア出兵で勝利し、その戦功をもって老父の決定を覆さなければ、永遠にジョゼフに勝てなくなる事を直感し恐れた。
「キミは私が権力の亡者になってしまった思ったのかい?」
愛妻家であるシャルルは公爵夫人を説得することを試みた。
シャルルは国内に留まることを求める公爵夫人を説得する材料がある事はあったが、それはガリアのタブーに触れる事であり、シャルルたち夫婦にとっても決して忘れ得ぬ悲劇の事だった。
「キミは『あの子』の事を忘れてしまったのかい?」
「あの子……? ま、まさか……!」
それは、双子として生まれてしまったが為に、ガリアのタブーに触れ、泣く泣く離れ離れにならねばならなかったシャルロットのもう一人の姉妹の事だった。
シャルルが権力を欲したのは、ジョゼフへの対抗心もあるが、もう一人の娘を取り戻す為でもあった。
「正直なところ、双子を禁忌とするガリアの習慣は絶対不可侵の物であり、決して触れる事すら許されない聖域だと思っていた。だけどね、トリステインの先代エドゥアール王と現在のマクシミリアン王が、既存の概念を破壊してトリステインを繁栄させたのを外から見ていて、ガリアの常識に捕らわれてはいけないという事を痛感したんだ」
マクシミリアンの改革は、隣国のシャルルの意識すら変えさせた。
再び、家族四人が再開するために、ガリアの悪しき習慣を変えさせるために、シャルルは権力を欲した。
「忘れる……忘れるものですか、生まれたばかりの子供を奪われ、『獣腹』と陰口を言われる日々にどれだけ悔しい思いをしたものか……!」
夫人は涙を流し、吐き出すように語った。
「だから私はこの戦役に勝利し、ガリアを正しい方向へ導きたいんだ」
シャルルは震えながら俯く愛妻の肩を抱き、王になった暁には、悪しき習慣を無くし、離れ離れになったもう一人の娘を呼び出し本当の家族をやり直そうと説いた。
「分かりました。離れ離れになってしまうのは悲しいですけど、
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