第百八十八話 宇喜多直家その六
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「織田家を盛り立ててな」
「そのうえで」
「宇喜多家を守っていこうぞ」
「さすれば」
宇喜多秀家は叔父の言葉に頷いた、そのうえで備中に進む織田家の先陣を務めることとなった。そしてだった。
宇喜多家も降ったことにより備前の国人達は残らず織田家についた、それは美作もだった。荒木は降った彼等と会ってから家臣達に言った。
「一つの勝ちがな」
「はい、備前だけでなくです」
「この美作までもです」
彼と共にいる高山と中川清秀が応える。
「我等に手に入りました」
「織田家の」
「恐ろしいことじゃ」
荒木は言うのだった、彼の軍勢の本陣の中で。
「戦の勝ち負け、しかも勝ち方でな」
「ここまで、ですな」
「動くのですな」
「そうじゃ、流石は殿と言うべきか」
信長が、というのだ。
「夜襲を見事退けられたわ」
「では、ですな」
「我等は」
高山と中川が言う。
「これよりですな」
「先に進み」
「そして備中で、ですな」
「その殿とですな」
「合流じゃ」
そして、だった。
「そのうえで備中でもな」
「毛利家とですな」
「戦ですな」
「次は毛利元就殿が出て来られるな」
元就自身がというのだ。
「いよいよな」
「あの御仁がですか」
「遂に」
「謀神と言われている」
「毛利家の主が」
「出て来る、しかしな」
ここでこうも言う荒木だった。
「謀は使わぬな」
「あの謀神がですか」
「その謀を」
「うむ、使わぬ」
こう断言するがだ、高山と中川は怪訝な顔になりそのうえで荒木に問い返すのだった。どうにもわからないという顔で。
「それは何故ですか」
「あの御仁が謀を使わぬとは」
「これまで謀で勢力を拡げてきましたが」
「その御仁がどうして」
「殿にも。織田家にも効かぬからじゃ」
だからだというのだ。
「それでじゃ」
「当家にはですか」
「謀は効かぬからですか」
「だから、ですか」
「使わぬと」
「そうじゃ、だからじゃ」
荒木は二人に話す。
「それでじゃ」
「それでは」
「ここは」
「そうじゃ」
まさにという返答だった。
「効かぬものを使っても意味がないな」
「毛利元就もそれがわかっているから」
「だからですか」
「当家との戦では謀を使わぬ」
「そうなのですか」
「うむ、使わぬ」
全く、というのだ。
「兵を用いた戦となるぞ」
「毛利元就の戦は」
兵を使ったそれはとだ、高山が言うのだった。
「相当なものですな」
「戦の方もな」
ただ謀ではないのが元就だ、戦も数多く繰り広げ勝ってきた、そうして山陽と山陰を手中に収めたのである。
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