第百八十八話 宇喜多直家その四
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「そうします」
「左様か」
「それがしにとって家はそうしたものです」
「絶対のものじゃな」
「ですから」
それでだというのだ。
「家を守る為には手段を選びません」
「謀でも何でもじゃな」
「使っていました」
そうだったというのだ。
「しかし」
「家が残るならじゃな」
「それがしは何もしませぬ」
「その言葉信じられると思うか」
「いえ」
宇喜多はそのこともわかっていて信長の問いに答えた。
「それがしのこれまでのことを考えると」
「ではどうするつもりじゃ」
「若し宇喜多家を織田家の末席に加えて頂けるのなら」
その時はというのだ。
「それがしは隠居し」
「そうしてか」
「この秀家に」
傍らにいる元服したばかりに見える若者を見ての言葉だった。その人相は非常に澄み渡り目も綺麗だ。
その我が子を見てだ、宇喜多直家は言うのだ。
「跡を継がせます」
「そうするのか」
「はい、そうします」
こう言うのだった。
「それがしは仏門に入ります」
「そして二度とか」
「表には出ませぬ」
人の世にはというのだ。
「そうしますので」
「わかった、では御主は隠居せよ」
信長は宇喜多に確かな声で告げた。
「そして跡は息子に継がせよ」
「さすれば」
「宇喜多家は織田家の家臣とする」
信長はここではっきりと言い切った。
「そしてその当主は宇喜多秀家とする」
「それがしが、ですか」
その秀家が信長に応えてきた、若さを感じさせるがそれと共に一本気なものがあり澄んだ見事な声である、喋り方もはっきりとしている。
「宇喜多家の当主ですか」
「そうじゃ、後見は宇喜多忠家とする」
秀家の隣にいる落ち着いた風貌の男に言った。
「御主は宇喜多直家の弟じゃったな」
「ご存知でしたか」
「うむ、聞いておった」
「左様でしたか」
その忠家は信長の言葉に畏まって応えた。
「それがしのことも」
「見たところ御主ならばな」
忠家ならばというのだ。
「若い甥を助けられる」
「だからこそですか」
「御主が後見せよ」
秀家をというのだ。
「よいな」
「有り難きお言葉、それでは」
「宇喜多家の所領は安堵する」
その全てをというのだ。
「後は手柄を立てよ」
「手柄を立てれば」
「褒美は思いのままじゃ」
つまり安堵した所領も増やせるというのだ、秀家に言った言葉だ。
「よいな」
「それでは」
秀家はそう聞いてだった、信長に強い声で言った。
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