第百八十八話 宇喜多直家その二
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「宇喜多直家の命は取らぬ」
「殿、ですから」
「それは」
黒田長政と蜂須賀家政も言う。
「あの者については」
「松永久秀もそうですが」
「あまり」
「近付けてはなりませぬが」
「弾正と同じじゃ」
その彼とだというのだ。
「安心してよい」
「それは何故でありますか」
浅野が信長に問うた。
「あの者が危うくはないとは」
「それはこれからわかる」
「宇喜多直家と会ってですか」
「わしもわかってきた」
信長の目の色が変わった、そのうえでの言葉だった。
「あの者のことがな」
「宇喜多直家のことが」
加藤嘉明が言う。
「そうなのですか」
「そうじゃ、おおよそじゃがな」
それでもというのだ。
「わかってきたわ」
「だからですか」
「そうじゃ」
それで、という言葉だった。
「何もしてこぬわ」
「殿に」
「そして織田家にも」
「そのことがこれからはっきりする」
当の宇喜多直家と会って、というのだ。
「では会おうぞ」
「それでは」
「しかしですぞ」
「殿、何かおかしな素振りがあれば」
その時はとだ、毛利と服部が信長に言って来た。
「我等がです」
「成敗致しますので」
「うむ、その時は頼む」
信長もその時は容赦しないつもりだった、それで二人の言葉を入れたのである。
「是非な」
「そして宇喜多の城もです」
柴田も言う。
「その時は」
「御主が攻めるというのじゃな」
「お任せ下さい」
その時はというのだ。
「是非共」
「そうじゃな、その時は城はな」
「それがしが」
「権六に任せる、ではな」
こうした話をしてだった、そのうえで。
信長は宇喜多直家と会うのだった、そして本陣にだった。
何人かの者達が来た、その先頭にはやけに暗い濁った目の男がいた。その者を見て織田家の家臣達が小声で言った。
「あれがか」
「宇喜多直家か」
「確かにのう」
「暗い目をしておる」
「人は目に心が出る」
「幾多の策をしてきた目じゃ」
「人を謀殺して来た者の目じゃ」
彼等もわかった、伊達に戦国の世で生きている訳ではない。だから宇喜多の目を見てそれでわかって言うのだ。
「危ういのう」
「やはりこの者だけは」
「生かしてはおける」
「少しでもおかしな素振りを見せれば」
「殿に指一本でも触れれば」
「容赦せぬ」
「見ておるのじゃ」
まだ刀は誰も抜いていないが何かあればと思っていた、そうした剣呑な中をだ。
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