第百八十八話 宇喜多直家その一
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第百八十八話 宇喜多直家
備前での毛利家の夜襲を退けた織田家はそのまま西に進んだ、するとその織田家の大軍の陣中にである。
備前の国人達が次々と馳せ参じて来てだ、こう言うのだった。
「是非共です」
「我等を織田家の末席に加えて下さい」
「そして織田家に忠誠を誓いますので」
「お願いします」
「わかった」
信長はその彼等に胸を張っているが鷹揚に応えるのだった。
「それでは以後織田家に仕えるがよい」
「お許し頂けるのですか」
「我等を」
「来る者は拒まぬ」
決して、という口調での言葉だった。
「だからな」
「左様ですか、では」
「宜しくお願いします」
備前の国人達も信長の言葉に応える、そしてだった。
備前の国人達のほぼ全ての者が織田家につきその家臣となることを誓った、しかしそれでもまだ一つだけだった。
林は難しい顔でだ、本陣において信長に言った。
「殿、美作と因幡でもどうやら」
「国人達がじゃな」
「寺社もです」
そうした土着の者達がというのだ。
「次々と織田家に加わってきております」
「左様か」
「この備前でもですか」
「よいことじゃ、しかしじゃな」
「はい、あの者だけはです」
ここでだ、林はその目を鋭くさせて言った。
「まだ来ておりませぬ」
「宇喜多家はじゃな」
「あの家だけはまだです」
「左様か、しかしな」
「あちらから来ると」
「今日にでも来るわ」
その宇喜多氏がというのだ。
「ゆうるりと待っていればよい」
「では今は」
「そうじゃ、このまま兵を進めていきじゃ」
「備中に向かわれますか」
「それでよい、ではよいな」
「わかりました、それでは」
林は信長の言葉に頷いた、そしてだった。
その夕刻近くにだ、長谷川が馬上の信長のところに来て言って来た。
「殿、宇喜多氏が」
「来たのじゃな」
「はい、当主の宇喜多直家をはじめとして」
「宇喜多家の者達がか」
「来ております」
「そしてじゃな」
「殿にお会いしたいと言っていますが」
「読み通りじゃな」
ここまで聞いてだ、信長は笑みを浮かべて言った。
「まさにのう」
「殿のですか」
「今日にでも来ると新五郎に言ったがのう」
その林を見ながらの言葉だ、彼は信長のすぐ後ろで馬に乗っている。
「その通りになったな」
「そうですな、まさに」
その林も応える。
「それでは」
「今から会おう」
「さて、宇喜多直家ですからな」
加藤清正が槍を手にして剣呑な顔で言う。
「用心せねば」
「殿に何かしようものなら」
福島も言う。
「即刻じゃな」
「この槍で串刺しじゃ」
加藤は己の十字槍を見た、その槍をだ。
「容赦せぬわ」
「わしもじゃ
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