第三十一話 相性その十一
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「そのことは」
「まあな、後ろからいきなりとかもあるからな」
「それがなかっただけね」
「確かによかったな」
薊もその時のことを振り返って菫に答えた。
「実際に」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「おかしいのかしら」
首を傾げさせてだ、また言う菫だった。
「何かと」
「何かとって?」
「いえ、怪人達が私達の居場所を知っていることよ」
「ああ、いつもあたし達の前に出て来るな」
「情報が漏れているとかは」
「それはないわね」
その可能性はないとだ、菖蒲が菫に答えた。
「私達がそれぞれ気まぐれで行った場所にも来るわね」
「そうね、言われてみれば」
「その時の気分で行った場所にまで行くなんてね」
とても、というのだ。
「有り得ないわ」
「じゃあどういうことかしら」
「情報が漏れていないのなら」
それならというのだ。
「また別の手段で私達の居場所がわかるということだけれど」
「居場所ですか」
桜がその話を聞いて言った、菖蒲のその話を。
「怪人達は私達の居場所、行き先を知っている」
「だから私達の行くところに来るのよ」
「その知る理由が問題ですね」
「本当にね、ただ」
「ただ、ですか」
「どうしてそれを知るかが謎ね」
「怪人のことでわかっていることは」
菊も言う、菊はいつものポニーテールのままだ。
「人間と動植物の遺伝子をそれぞれ合わさって造られている」
「完全な人工生命体ね」
「自然に出て来る筈のない生きものね」
「わかっているのはこのことだけよ」
「そういうことね。何処の誰が創造しているのか」
そうしたことも、とだ。菊は考える顔のまま言っていく。
「そうしたことも謎で」
「謎だらけね」
「何もかもがね」
「まだまだね、それに」
「それに?」
「私達にしても」
菖蒲の言葉がここでだった、普段よりも硬いものになった。そしてその硬くなった声でだ、こう言ったのである。
「全員孤児でどうして力を持っているのか」
「そのこともそういえば」
「謎ね」
「ううん、私達も謎だらけなのね」
向日葵は自分についてもそうだと述べたのだった、菖蒲の話を聞いて。
「本当の親も。それにどうして力をもっているのかも」
「何もかもがね」
「わからないわね」
「そういえばあたし達力の持ち主全員実の親わからないんだよな」
薊も湯舟の中で腕を組んで言う、脚は胡座になっている。
「八人全員が」
「異様ね」
「その全員が神戸で顔を合わせるってのもな」
「偶然にしては出来過ぎているわね、それに」
「それに?」
「今気付いたことだけれど」
菖蒲は自分を含めたここにいる六人、裕香以外の面子とだ。ここにはいない二人のことを自分の頭の中で重ね合わせて考えてから言った。
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